元天才子役・坂上忍が考える「子どもらしさ」とは?

坂上さんによると、彼ら彼女らは、いかに周りに迷惑をかけずにいられるか、大人にとって扱いやすい子どもでいられるかをよく理解しているとのこと。劇団やタレント事務所に入ることで、彼らはまず、挨拶を覚えます。「おはようございます!」と、皆、大人が喜ぶような挨拶ができるようになるのです。

でも、子どもがいつでも「おはようございます!」と挨拶するのは変ではないですか?

このことに坂上さんも異論を唱えています。
「それはけっして自然な挨拶ではなく、芸能界特有の作られた挨拶だと感じてしまうのも事実です。これって、子どもらしいと言えるでしょうか? 『大人にとって都合のいい子役ばかり作るってどうなの?』と、いつも疑問を抱いてしまいます。役者として子役と共演することもありますが、『こんなに小さいのに、挨拶ばっかり達者だなぁ。自分の子どもだったら、こんなふうにはしたくない……』」と思うことが多々あるそうです(同書より)。

確かに、昼に会っても、夜に会っても、業界ではその日初めて会った時の挨拶は「おはようございます」となります。これは完全に大人のルールに従わせていますし、大人の都合ですよね。
しかし、世の中では不思議と、こういった挨拶ができる子の評判が良くなりがち。それは本当に正しい評価なのでしょうか。

本来なら子どもは、素直で天真爛漫で子どもらしくあってほしいもの。また、良い面だけでなく、悪さをしたり、噓をついたり、間違えを起こすのもまた、「子どもらしさ」。
大人を怒らせ、イライラさせることも含め、本来の姿だと言えるのです。

“子どもだけに許される特権”を使えるのは一瞬

しかし、世の中では、ウソをついて間違えを起こす子どもに対して、なかなか「子どもらしくて素晴らしい」といった評価はされません。それを察してか、親たちは、親の都合に合わせた、親が評価したくなるような「子どもらしさ」というものを勝手に作り上げ、それを子どもたちに押しつけているのです。

「“子どもだけに許される特権”を使えるのは、実際に子どもでいられるほんの一瞬でしかありません。その特権を思う存分に使って、ときには怒られたり、ときには褒められたりと、親を含め周囲の大人たちからの“愛情”を受けることの積み重ねが、その子の未来を形成する経験値となるのです。そしてその経験こそが子どもの個性を作り上げ、大人になる過程での軸になっていくのだと考えます」(同書より)

子どもらしさを失い、大人の都合の良い子どもとして育った場合、本当の意味での大人たちからの愛情を受ける機会が少なくなってしまうのです。本当にそれで良いのでしょうか。

「子どもらしさ」とはなかなか難しいものですが、私の中では一つの軸ができました。それは、「長い目で見た時に子どもにとって良いことなのかどうか」。いま、目の前のことで評価されるために躾をしていると、子どもにとって非常に窮屈なこととなるでしょう。親にとって都合の良い子どもをつくってはいけない、そう思うようになりました。