【TVドラマ】母子関係を描く、ぶっ飛んだコメディ『理想の息子』

2012.3.10 6:00

今期の平均視聴率上位5作品に名を連ねている『理想の息子』をレポート。ぶっ飛んだ設定の中で“理想の息子”像を探求した本作。一筋縄ではいかない野島伸司脚本の妙も見どころ。

前回のレポートで、今期の平均視聴率上位5作品は、『ストロベリーナイト』『ラッキーセブン』『ハングリー!』『理想の息子』『最後から二番目の恋』とお伝えしたが、その後、4位と5位が入れ替わって、現在は『最後から二番目の恋』が4位、『理想の息子』が5位となっている。

まあ、もともと3位以下はそんなに差がないんだけど、『最後から二番目の恋』が7話でこれまでの最高13.1%を出したのに対して、『理想の息子』がやや伸び悩んでいるのが原因だ。

というわけで、今回は日テレ系土曜9時から放送中のコメディ『理想の息子』をレポート。

視聴率が伸び悩んでいる原因はいろいろあるだろうが、少なくとも『理想の息子』は、最初から“マザコン”というフレーズにちょっと引っ張られすぎた気がする。確かに主人公は母ちゃん大好きな高校生で、母ちゃんのことを第一に考えている。でも、ドラマを見ていてもマザコン特有の不快感はそんなにない。

主人公が毎回言うセリフに「オレはマザコンじゃない。ただ母ちゃんが好きなだけさ」というのがあるんだけど、その通り、マザコンを描いているわけじゃないからだ。あくまでも描いているのは母子関係で、どちらかといえば、視点はタイトル通り母親から見た“理想の息子”。そのあたりはドラマ全体の視聴者層と、若い子も見る土曜9時枠の傾向をうまく捉えているような気がする。とにかく、かなりはっちゃけたコメディに仕上がっているのだ。

主人公の鈴木大地を演じているのは、Hey!Say!JUMPの山田涼介。典型的な美少年で、まず見た目で“理想の息子”の基準をクリアしている。というか、コメディをここまで思いっきりできるとは思わなかった。やっぱり『スクール革命!』(日曜昼のバラエティ)とかで鍛えられてきたからだろうか。笑いにテレがないところがいい。

母親の海を演じているのは鈴木京香。こちらは母親役に徹して、色気を封印しているところがいい。ドラマの内容として母親の美しさを切り口にしたエピソードもあったんだけど、その気になれば綺麗なお母さんにもなれるわけで、キャスティングは間違いなかった。

ただ正直、初回はどうなることかと心配した。舞台となっているヤンキー高校の生徒の描き方もありふれていたし、最後に繰り出した大地のマザコンコアラパンチも、あまりにも唐突すぎたし……。

説明しよう。大地(山田涼介)はもともと成績優秀で、有名進学校に通っていた。ところが、母親の海(鈴木京香)が、ヤンキー高校の学食でパートを始めてしまったため、大地が心配して、勝手に海が働く高校に転校してしまったのだ。そこで大地は甘っちょろいマザコンだと目を付けられ、ボクシング部の先輩にボコボコにされる。そんな窮地で大地が繰り出したのが、画面にコアラのCGが大きく映し出されるマザコンコアラパンチなのだ。

まあ、設定としては、母親のことを馬鹿にされたり、母親からもらった大切なものを汚されたりすると、息子が驚異的な力を発揮する感じ。なぜコアラなのかというと、大地がもともと通っていた有名進学校でオーストラリアに修学旅行に行くはずだったのに、転校したことで行けなくなったから、みたいなことに由来している。

でも、初回の心配事は、2話以降を見ていくと、ほぼ解消された。2話から5話まで、大地に絡んでくる生徒には、それぞれワニ、ヘビ、ゾウ、ヒョウの必殺技があって、最終的にはマザコンコアラパンチが効いて、みんな友達になるという平和な展開になったのだ。ボクシング部の先輩も大地を認めて、いわゆるヤンキー高校が舞台というのは今や設定だけの問題になっている。

その後も他校からオオカミ、パンダ、タカなどが襲ってきているが、みんなの協力もあって、大地はことごとく勝利! ……いや、そんなことはどうでもいいのだ。母子の話だ、このドラマは。

母親の海は、大地がお腹の中にいる時に離婚している。大地には、父親は事故で死んだと話していたが、実際は夫の浮気が原因による離婚だ。その後、海は自分のプライドを守るために、慰謝料も養育費も貰わず、たったひとりで大地を育ててきた。でもそれには、ある魂胆があった。苦労して育てるのだから、その苦労をいつか回収しようという魂胆だ。将来、息子に庭付きの一軒家を買わせる。そのためには、どんな卑怯な手を使ってでも、息子が裏切らないようにいい母親を演じる。それが海の本心で、このドラマはそこからスタートしている。 

つまり、ぶっ飛んだコメディの体裁はとっているけど、その中で、母性本能とはいったい何なのか、無償の愛は本当に存在するのか、というようなことを切り口にして、理想の息子とはどういうものなのかを描いているのだ。大地の父親が登場した7話、大地と海はもしかしたら本当の親子じゃないかもしれないという問題が起きた8話など、最近は海も自分で本当の気持ちが分からなくなってくる展開にもなっていて、テーマはさらに核心に迫りつつある。

まあ、脚本は野島伸司だし、単なるコメディで終わるはずないんだけどね。

野島伸司がここまでテンションの高いコメディを書くのは、1989年の『愛しあってるかい!』以来じゃないだろうか。陣内孝則、小泉今日子、柳葉敏郎、BARBEE BOYSのKONTAなどが出ていた、あの学園ラブコメディだ。まさか、決めゼリフが「愛しあってるか~い!」から「マザコンコアラパーンチ!」に変わるとは思わなかったけど……。  

もちろん、コメディは笑えるか笑えないか人それぞれ。でも『理想の息子』は、振り切れたコメディにしたのがかえって良かったと思う。3月10日放送の第9話も、大地の妻になるという女性が現れたり、メインキャラクターのひとり・浩司(中島裕翔)が豹変しそうだったり、大地の偽物が出てきそうだったりと、見どころは多そう。

最終回では海が、どんな理想を大地に対して求めるのか。けっこう楽しみにしている自分がいる。 

たなか・まこと  フリーライター。ドラマ好き。某情報誌で、約10年間ドラマのコラムを連載していた。ドラマに関しては、『あぶない刑事20年SCRAPBOOK(日本テレビ)』『筒井康隆の仕事大研究(洋泉社)』などでも執筆している。一番好きなドラマは、山田太一の『男たちの旅路』。

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