地域密着型の「コジマ×ビックカメラ」が挑戦する「買い場づくり」とは?

2015.7.2 19:37配信
6月27日にオープンした「コジマ×ビックカメラ井草店」は半径2~3キロメートルを商圏とする地域密着型店舗だ

ビックカメラグループのコジマは、2年前からコジマの旧店舗を順次、「コジマ×ビックカメラ」にリニューアルしている。6月27日にオープンした「コジマ×ビックカメラ井草店」(東京都杉並区)もそんな1店だ。新しい店舗では「体感コーナー」を設けたり、販売スタッフによる手書きPOPやアイデアが随所に見られる。地域のお客から支持される店づくりへのチャレンジをレポートする。

●「売り場」ではなく「買い場」づくり

コジマの木村一義会長兼社長 代表執行役員は、販売する側の思惑が強い「売り場」づくりではなく、顧客からの視点や発想の「買い場」づくりに取り組むことを事業方針に掲げている。

また、販売員にはメーカーの代理人ではなく、お客様の代理人としての姿勢に徹することを説いている。コジマ×ビックカメラ井草店の「買い場」からは、木村会長兼社長のそうした考え方が現場に浸透している様子をうかがわせる。

井草店の石井秀尚店長は今回のリニューアルについて「まずは回遊しやすい店づくりにしたことと、実際に商品を試せる体感コーナーを細かいところまで充実させた」と語る。

井草店は交通量が多い都心の環状八号線と新青梅街道が交わる井草3丁目の交差点近くに立地するが、幹線道路沿いの大型店ではない。環状八号線がバイパスのトンネルをくぐることと、交差点から少し入っていることと、また店舗面積が約2100平方メートルと小ぶりなことから、半径2~3キロメートルを商圏とする地域密着型の店舗だ。

●ファミリー層や年配客に配慮した店づくり

小さな子どもを家族に持つニューファミリー層や年配客も多く、そうしたお客に配慮した店づくりを目指していることは、店に入ってすぐにわかる。什器が女性の目線でも店内が見通せる約1メートル50センチの高さに設計されていることもあり、店内が見渡せるのだ。都市型のビックカメラでみられる、男性でも見通せないほどの高い什器とは違う。

そのため、店内に入ると天井から下がっている「キッチン家電」「冷蔵庫」「洗濯機」などボードが目に入り、コーナーの場所が分かりやすい。「まずは店に入って、自分がどこにいけばいいのかわかっていただけるように意識した」と石井店長は語る。この点も、天井からプライスカードが下がっている都市型店のイメージとは異なる。

さらに気を遣っているのが、什器と什器の通路幅が1メートル30センチにしていること。これまでのコジマの店舗よりも通路幅は狭いが、ベビーカーを押すお客同士がすれ違ってもぶつからない幅は確保してあるという。

今回のリニューアルでは、品ぞろえを大幅に増強した。クリーナーで約2倍、冷蔵庫やエアコンで約1.5倍、デジタル一眼の交換レンズで約2倍、カメラ関連のアクセサリーで約5倍といった具合だ。それでも、什器を低くするゆとりを持たせることが可能なのは、店舗奥のバックヤードスペースを売り場に改装したことと、通路幅を調整するなどで、店づくりの工夫を施したからだ。

●「コジマ×ビックカメラ」初のエアコン島展示

エアコンコーナーでは「コジマ×ビックカメラ」で初の試みとなる島展示を導入した。壁面展示のスペースが割けない都市型店ではエアコンの島展示は見られるが、郊外型の家電量販店では、壁面をフルに使うパターンが多く、島展示は珍しい。しかし、壁面展示だけだとリビングや寝室、子ども部屋のエアコンを選ぼうとすると、端から端まで行ったり来たりしなければならないという欠点がある。

そこで「広いリビング用は壁面展示、畳数が少ないエアコンは島展示とコンパクトにまとめることで、お客に負担をかけないコーナーがつくれた。結果的に、エアコンの隣に扇風機コーナーがつくれるなどの相乗効果も生まれた」と石井店長は語る。エアコンの島展示は、見た目にも立体的でインパクトがある。

●床一面をクリーナーの体感コーナーに

体感コーナーでひときわ目立つのがクリーナーのコーナーだ。グリーンのタイルカーペットを一面に敷いたスペースで、実際のクリーナーの吸い込み力や操作感などを自由に試すことができる。商品が展示してあるゴンドラのすべてで電源が取れるようになっており、お客は展示しているクリーナーを実際に試せる。

井草店では、子育てで忙しいニューファミリー層を意識して、自動で掃除をしてくれるロボットクリーナーや、気づいたときにサッと掃除ができるスティッククリーナーの展示に重点を置いている。

クリーナーの体感コーナーでは、「井草」という地名をしゃれにしてか、畳コーナーも用意。畳の部屋が多い家に住む年配客に対して、最近のスティック型は吸引力が高く、ゴミがしっかりとれることを実演でアピールする。

各社からのラインアップが増えた布団クリーナーも、低いベットに布団を敷くなどして、やはり同店がターゲットとする客層のお客が試しやすいように気を配っている。

●販売スタッフの顔が見えるPOP

「コジマ×ビックカメラ」の店舗で目立つのが、販売スタッフの等身大の写真や顔写真、または手書きPOPが多く飾られていることだ。井草店でも、まず目に入ってくるのが柱の周りに設置された販売員の笑顔の顔写真とコメント。たとえば、グリル鍋が展示してる近くに柱には、「自宅の焼肉が一番美味しい」と書かれた緑のボードを持った販売員の写真が置かれている。

店員の顔写真やPOPは、お客との距離を縮める効果がある。リピーターが多い同店なら、なおさらその効果が発揮されるだろう。冷蔵庫コーナーの上に飾られた、ポスカで手書きしたブラックボードも「コジマ×ビックカメラ」では初の試みだ。

「これまで冷蔵庫の上は商品在庫のスペースだったが、思い切ってボードを展示してみた。いつもみんなで過去にやったこととは違うことに取り組もうと話しあっている中で、こんなアイデアが飛び出してきた」と石井店長は笑顔で話す。

キッチン家電のコーナーでは、円柱型のちょっと変わった什器の注目商品コーナーがある。ここでは、テレビや雑誌などで紹介された話題の商品を展示している。たとえば、アメリカの家庭で古くから愛用さているメイソンジャーが日本で流行っているので、専用ボトルと関連する本を一緒に展示している。こんな展示手法が可能なのも、雑貨から書籍まで扱っているビックカメラのグループ力が生かせるからだ。

最新の話題の商品や情報が店頭で入手できることは、お客にとっては「あの店に行けば、何か発見があるかもしれない」という期待が膨らむ。結果的に、来店効果を促す効果にもつながる。

●子どもも大人も飽きない「買い場」とは

キッチン家電のコーナーでは、子どもも楽しめるような工夫が凝らされている。たとえば、コーナーのエンドの先にある通路のゴンドラにあるポップコーンメーカー。実際に作ったポップコーンも一緒に並べることで、お客に利用シーンのイメージを膨らませる。

隣のゴンドラには「そうめん流し器」というトイグッズや、ビールを注いだグラスを置くと泡ができる「ジョッキアワー」を展示。先のメイソンジャーの隣では、子どもに大人気の「とびだせ おすし」を展示するなど、親子で楽しめるコーナーづくりになっている。

●ヘッドフォンの視聴コーナーで光る「ちょっとした気遣い」

2階はテレビやデジタルカメラ、PC、スマートフォンなどのデジタル家電のコーナーになっている。ここでも細かいところで、お客の心をくすぐるアイデアが発見できる。

最近のオーディオコーナーにはハイレゾ関連商品が増えていて、ヘッドフォンの種類も豊富。実際に視聴できる売り場も増えているが、ちょっと抵抗を感じる経験はないだろうか。

とりわけ、耳の中にダイレクトに入れるカナル型のヘッドフォンは、音の素晴らしさを体感してみたいものの、自分の耳の中に入れるのにためらう。女性なら、なおさら抵抗感が強いのではないだろうか。

そこで井草店では、コーナーのエンドにウエットティッシュを置いている。ヘッドフォンを軽く拭き取ってから自分の耳にあてて音楽を聴けるようにしているのだ。余計な不快感がなくなり、音のすばらしさに没頭できるだろう。井草店では、こうしたちょっとした気遣いが、いろんなところに散りばめられている。

同じように、最近のヘッドフォンはデザイン性の高いものも多い。当然ながら、装着した時にどんな感じになるのかをチェックしたい。そこで、コーナーに鏡が置いてある。

また、手書きPOPでは「柔らかい材質なので運動中でも快適な着け心地 汗が耳に入りにくいので走っていても気にならない」など、スポーツ時に合うヘッドフォンがあることを訴求している。

●デジタル家電でも「体感」を徹底

デジタルカメラのコーナーでは、レンズの交換が実際に試せるように、本体の上に交換レンズを展示している。交換レンズをガラスボックスに入れて展示しているケースはよく見かけるが、実際にレンズの交換具合が試せるのは珍しい。

「当店をご利用されるお客様はカメラのマニア層ではなく、これから使ってみたいという方が多いので、どのようにしてレンズを交換すればいいのかも試せるようにした」(石井店長)。

お試しコーナーの徹底ぶりは、iPhone用のケースにまで及ぶ。シリコンやハード、バンパー、フラップなど、素材ごとに違うケースを手にして触れる。ここでも、それぞれにワンポイントが店員の手書きで添えられている。

「コジマ×ビックカメラ」の店頭からは、さまざまな商品の使い方やアイデア、発見が得られる。2年間を通じて、店頭では実にさまざまな試行錯誤が行われたに違いない。しかし、「体感」というお客との交流や触れ合い活動を通じて丁寧に販売していく手法は、まさに「コジマ×ビックカメラ」が掲げている「買い場」づくりという成果に、着実に結びついているようだ。(BCN・細田 立圭志)

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