「ヴィジュアル系」を定義するのはファン?

吉田:近年の新しい流れとして、luz(※6)や、佐藤流司のThe Brow Beat(※7)といった「ヴィジュアル系ではない出自の人がヴィジュアル系的なことをやっている」というのがあると思うんです。

※6 ソーシャルミュージックシーン発の男性シンガー。サポートメンバーにLeda(Far East Dizain)、RENO、MASASHI(Versailles)、淳士(SIAM SHADE/BULL ZEICHEN 88)らが参加している。

※7  俳優の佐藤流司がRyuji名義で行っているバンドプロジェクト。PENICILLINのHAKUEIがプロデュースを手がけている。

浅井:しかし、ヴィジュアル系出身ではない人をヴィジュアル系として売り出して成功した例は過去にないですよね。なぜなら、ヴィジュアル系であるかそうでかないかを決めるのは、お客さんだと思うからです。

ライブに来ているお客さんがバンギャルだったらヴィジュアル系、ステージ上でやることがどれだけヴィジュアル系然としていても、お客さんがヴィジュアル系じゃなかったら、認められないという結論になる。

藤谷:「ヴィジュアル系の出自ではない人が〜」の先駆者といえるjealkbも武道館を目指して頑張ってはいるものの、そもそものタレントとしてのポテンシャルを考えると難しい規模感ですよね。

浅井:僕はOsirisというバンドが好きで、自分のイベントでもよくかけているんですけど、彼らは携帯ゲーム『バンドやろうぜ!』(※8)の企画バンドですよね。昔でいう『快感♥フレーズ』から出てきたΛuciferみたいな。

曲はパーフェクトにヴィジュアル系なんですよ。めちゃくちゃカッコいいし超上手い。でもお客さんを見るとバンギャルは多くはない。

※8 2016年にスタートし、2018年8月に配信終了したスマートフォン向けリズムゲーム。ゲーム内バンドが実際にリアルなバンド活動も行っていたことも話題に。なお吉田さんが過去に編集長をつとめていた雑誌とは関連性はありません。

藤谷:The Brow Beatのライブには行ったことがありますが、体感2割くらいはバンギャルさんがいるかな? という感じですね。HAKUEIさんがプロデュースしていて、ライブにも出演されているので、その影響もあると思いますが。

浅井:やっぱりヴィジュアル系のお客さんって、叩き上げで高田馬場エリアから頑張ってきました的な、自分たちが売れない頃から応援していたとか、そういうストーリーがないと、ヴィジュアル系として認められない傾向にありますよね。

藤谷:他のエンタメにヴィジュアル系要素を見出しているバンギャルさんはたくさんいると思うんですが、それも皆バラバラなので、難しいところではありますよね。

吉田:ゴールデンボンバーはどうなんでしょう。

浅井:ゴールデンボンバーは最初からヴィジュアル系として、お客さんが10人とかの頃から、池袋サイバーとかにも出ていたので、その定義からは外れていないわけで。

神谷:鬼龍院さんのインタビューでも、ヴィジュアル系を選んだ理由のひとつとして、「お客さんが受け入れてくれそう」というのはあったそうです。「ヴィジュアル系」のお約束の定義を満たしていたら、音楽的には何でもできるという文化がヴィジュアル系にはあったのでは。

藤谷:「バンギャルさんが聴く音楽=ヴィジュアル系」であるならば、「結果的にバンギャルさんが面白がっていたらなんでもあり」だったのが、「最初からバンギャルさんの好きそうな音楽や歌詞」を狙っているような変化を感じますね。杞憂だといいんですけど。

吉田:新しめのバンドでいうと、僕はぞんびにめちゃくちゃ期待しています。とくに今年出した『クソったれが』と、そのカップリングの『餞の唄』がすごく良くて。

ただ、その次に出したシングルがバンギャルのことを意識してなのか、両A面のうちの片方はX JAPANのカバーだった。そこは正直、すべてオリジナル曲で勝負してほしかったですね。ぞんびの売りは、話題性でバズらせることではなく、曲の良さだと思うので。

神谷:バンド側がどうなりたいのかも変わってきたように思います。たとえば武道館やアリーナクラスまで行きたいのか、それとも中規模で長く安定してバンド活動を続けるなどの別の道を進みたいのか。

インタビューを読んでいると、規模を追求するよりも長く続けることに重きを置いている発言によく出会います。バンドの成功の定義が変わっているのでしょうか。

浅井:現実的な問題として、頭打ちになったらどうするのかというのがありますよね。今年とあるバンドマンからしみじみと相談されたことがあって。「もう活動休止したほうがいいんですかね僕たち」と。

要するに、絶対の自信がある曲を出してツアーをやって、できることは全部やっている。でもどうしても動員が伸びない、そうなるとファンも疲弊していくし、その状況も不本意だ。そういうときに、周囲のバンドが活休して、復活ライブをソールドアウトさせているのを見ると、羨ましいじゃないけど、腑に落ちない。ずっと地道にやっている自分たちの方が損した気持ちになるって。その愚痴もわからんでもないなって。

神谷:難しいですよね。ヴィジュアル系かどうかを決めるのはファンの方というけれど、ではそのファンを惹きつけるものはなんなのか。叩き上げからやってきたアーティストを応援するというストーリーであれば、アイドルもYouTuberもお持ちです。叩き上げストーリーはヴィジュアル系だけのものではなくなってしまっています。

ヴィジュアル系をヴィジュアル系たらしめるものはなんだろうと考えちゃいますね。「バンドである」とか、「曲がいい」だとか、プリミティブなところに戻っているのが今だと思います。

藤谷:そうなると単に「曲の良いバンド」ですよ。「ヴィジュアル系」バンドとは? ってなりますよね。

神谷:仰る通りで、「曲の良いバンドとは」から定義し直す時期なのかなと思います。

極端な話、「ヴィジュアル系らしくあろう」という意識を一度取り払ってもいいのかなと思います。「ヴィジュアル系らしくあろう」と考えている時点で、今あるものや過去にあったものに似せるコピーの思考になってしまってますし。

藤谷:ただ、Rides In ReVellionのように若い世代がいわゆる王道と呼ばれるような世界観のあるヴィジュアル系をやっているのは面白いと感じています。

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