『神秘の球体 マリモ―北海道 阿寒湖の奇跡』より

小さな子どもを持つママも、気軽に覗ける映像祭

<グリーンイメージ国際環境映像祭>は昨年から始まった、まだ若い映画祭。

環境がテーマとなると、お堅いイメージを抱かれそうだがご安心を。

映画祭全体から感じられるのは、“環境について興味をもってもらうきっかけの場”といった大人から子供まですべての人に扉が開かれたもの。

実際、こういう映画祭では珍しく来場者は映画ファンや関係者よりも、一般が大半を占める。

作品も自分の身と重ねられるテーマをもったものが選出され、そのことについて一般の人も専門家も気軽に語り合える場が提供されている。

いい意味で、環境の現在を知る入口といった存在。

さまざまな人が集うことで、あまりこういった映画祭に参加しない小さな子どもをもつママをはじめとした女性も気軽に覗ける雰囲気がある。

グリーンイメージ国際環境映像祭実行委員会 事務局長の尾立愛子さんも東京開催をこう振り返る。

「昨年は環境に興味のある人やある団体で活動している、いわば環境の専門家のような人が多かった。でも、今年はこれから有機農業を始めたい人とか、今の環境事情を知ってみたい人など、一般の層が増えました。年齢も20代から80代までという幅広さ。“前回よりも人の輪がより広く、大きくなりましたね”といってくださる人もいて、私たちが目指す形になってきたかなと思っています」

人間らしい生活とは?

では、どんな作品が上映されているのか? 

すでに終了した本開催となる東京会場で上映されたのは全11作品。全作品を通して世界で起きている大問題から、自分のすぐそばで変わりつつある変化まで、大人も子供も環境について関心を寄せられる作品がラインナップされている。

その中からいくつかピックアップして触れたい。

イタリアのエンリコ・チェラスオーロ監督が手掛けた『Last Call-科学者たちの警告』は、40年前に発表され、環境保護運動について書かれた書籍「成長の限界」に着目している1作。

発売当時、本著は日本でも大反響を呼んだという。

この中で専門家たちが伝えたことを簡単にまとめると、“資源に限りある地球で極限の成長を求めれば必ず破綻する”というメッセージ。

大量生産、大量消費が当たり前になったいま、ここで語られる科学者たちからのメッセージは現代を生きる我々の心に痛いほど突き刺さる。

“人間らしい生活とは?”と、今の自分のライフスタイルについてふと立ち止まって考えたくなるような内容で、これから未来を生きる人への提言であり、エールとも受止められる。

チェラスオーロ監督は「日本はこの著書をもっとも評価した国のひとつ。それだけに今回、日本で上映されることは感慨深い。ひとりでも多くの人にこの作品で語られる地球へのメッセージが届くことを願っています」と言葉を寄せている。