いま、福島で何が起きているのか?

これら海外作品に対し、日本からは福島に関する力作が届けられている。

『福島 生きものの記録 シリーズ1~被曝~』と『シリーズ2~異変~』は、原発事故で取り残された家畜やペット、野生動物などに目を向けた。

どちらの作品も放射性物質による汚染が、生きものたちに、ひいては生態系にどんな影響を及ぼしているのかを、長期にわたって記録。

「シリーズ1~被曝~」は、被曝の状況について、「シリーズ2~異変~」では、その後、あらわになった動物たちの異変について言及している。

定点観測的な視点で福島の生きものを見続けた取材は、単発的ではきっと見過ごしてしまう小さな変化も見逃さない。

増え続ける斑点牛、巨大に生育したタンポポ、奇形が発生するヤマトシジミチョウなど、なんらかの影響があったことでしか説明できない事象が次々と明るみになる。

それはショッキングこの上ない。

でも、原発事故調査や家畜、野鳥などそれぞれ研究者やエキスパートがここで語っていることは、これから生きる人々へのひとつの提言。

子を持つ親ならばしっかりと知っておきたい一般のニュースや報道が伝えない事実がここにはある。

海の生命体の神秘に迫る

また、大人だけではなく親子で楽しめる作品も本映画祭にはある。

ダビッド・ミリエム監督の『ミッドナイトブルー』は、8分間の短編アニメーション。

大海原で暮らすクジラの目を通して、人間の身勝手な行為を見つめていく。

砂絵で表現された映像は、大人よりもむしろ柔軟な発想力を持つ子供の方がさまざまなイマジネーションを膨らますもの。子供にとってはほかの動物から自分たちがどう見られているのか?など多くのことを考えるきっかけになるはずだ。

一方、『神秘の球体 マリモ―北海道 阿寒湖の奇跡』は、北海道の阿寒湖に生息する国の特別天然記念物「マリモ」に肉迫したネイチャー系のドキュメント。

緑色の球体をした藻として知られるマリモは、阿寒湖だけに群生している。だが、実はなぜ丸い形をしているのか? なぜここにだけにいるのか? その理由はいまだ謎のまま。

なんでも生物においても、植物においても進化で球体になるのはありえないことなのだとか。このドキュメントは、その謎に迫ろうと取材班が特別な許可を得て、阿寒湖のマリモの群生地に水中固定カメラを設置。1年に渡る撮影で、今まで謎のベールに包まれていたマリモの生態をはじめて捉えている。子どもが心をワクワクさせる自然の神秘が目撃できる1作といっていい。