北村一輝  撮影:源 賀津己 北村一輝  撮影:源 賀津己

昨年に続き、シアターコクーンでの赤堀雅秋新作書き下ろし第二弾『大逆走』が決定。主演の北村一輝に高まる期待を聞いた。

舞台『大逆走』チケット情報

――5年ぶりの舞台に加え、劇作・演出の赤堀さんとは初めての創作です。
北村 赤堀さんが自作戯曲を初めてご自身で監督・映画化した『その夜の侍』(2012年)を観て、とても感銘を受けました。僕も仕事をしたことがある俳優さんたちも出ていて、彼らが本気でぶつかり、作品を楽しんでいるのが伝わってくる。カットやアングルなど「どう見せようか」という意図や思惑以前に、(胸を拳で叩きながら)ココに確かな「熱」があると感じました。
もうひとつ、赤堀さんがシアターコクーン初進出した作品『殺風景』も映像で拝見して、これも良かったです。出演する俳優が、一般的なイメージや良いとされるところ以外の顔をちゃんと見せている。しかもプログラム読んだら、赤堀さんについて俳優たちがボロカスに書いていたんですよね(笑)。「ああ、この人は信じられる」と思いました。

――実際に話された赤堀さんの印象は?
北村 まだ、お互いを知るほどの話は何もできていません。でも好きとか嫌いに関係なく、一緒に戦える人じゃないかな、と。僕ら俳優にとって意見を言い合ったり、対立することがあっても、ものをつくる過程でならばすべてワクワクする出来事。そういう時間を共有できる人だと思います。

――舞台と映像では、演技や気持ちのうえで変わるところはありますか?
北村 技術的なこと、2階席の奥までせりふをいかに届かせるかなどは考えますが、根本にある気持ちや心構えに違いはないと思っています。ただ、やはり生身の大勢の観客の前に立つことに恐怖は感じますね。舞台の場合いつも以上に準備し、ベストな状態で臨みたいと切実に思います。最悪の場合は「前の人にかぶって自分を見えないようにする」という、奥の手もがありますし(笑)。

――北村さんが見えないのは、観客には非常に残念なことです……。
北村 (笑)とにかく舞台は緊張しますね。それは自分の中に、「北村一輝という俳優をどう見せるか」という余計な意識があるからで、そんな気持ちが起きないほど全力で作品を生きられるのが最高の状態。だから、この公演では緊張しないのも目標のひとつですね。赤堀さんと彼の作品世界が持つ、計算など一切ない不器用さと、その奥にわだかまる「熱」。それらはきっと僕を作品のなかに深く引き込み、つまらない自我を忘れさせてくれると思います。 

公演は10月9日(金)から25日(日)まで東京・Bunkamuraシアターコクーン、10月29日(木)から11月1日(日)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。東京公演は先行抽選プレリザーブを受付中。

取材・文/尾上そら