30-DELUX『新版 義経千本桜』より 30-DELUX『新版 義経千本桜』より

迫力のアクションで魅せ、“笑って、泣けて、考えさせられて、かっこいい”演劇を作り出している30-DELUXの最新作、『新版 義経千本桜』が7月16日、東京・サンシャイン劇場で開幕した。主演は元宝塚雪組トップスターの水夏希。

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源平合戦の時代を背景に、勝利大将でありながら兄頼朝に謀反を疑われ都落ちしていく源義経を軸に、壇ノ浦から逃れた平家の大将たちの姿、そして武士たちの戦いに巻き込まれた庶民たちの悲劇…と、歴史の「if」が描かれていく『義経千本桜』。その歌舞伎の三大狂言として知られる本作を、30-DELUX流に大胆にアレンジ。渡海屋銀平、いがみの権太、狐忠信といった人気のキャラクターたちのエピソードもしっかり描き、原作の要素を活かしながらも、オリジナリティもたっぷり加えた、切なく、面白く、そして熱い時代劇が誕生した。

なかでも、歌舞伎ではあまり描かれない義経の内面の葛藤や、義経と弁慶を筆頭とした家来たちとの関係性などがしっかりと描かれるところが『新版~』ならでは。さらに義経の背負うバックボーンには斬新な解釈が加えられた。水夏希は、その義経を悲しくも凛々しく魅せる。揺れる心を隠しもせず、それでも力強くまっすぐに立つ姿はカッコ良く、水夏希という女優が持つ魅力が存分に生きた。彼女にとっても代表作になりそうなはまり具合である。

一方で、やはり原作が本来持つ群像劇という部分でも、充実のキャストが多彩な表情をみせた。弁慶を演じる馬場良馬が熱い感情を爆発させれば、静御前に扮する新垣里沙が激しくもまっすぐな思いをほとばしらせる。平惟盛に扮する坂元健児はシリアスな演技で物語を締めると同時に、“世話物”的なやわらかい表情も見せ芸達者ぷりで舞台を支える。碇知盛のシーンを歌舞伎さながらに熱演する小笠原健、不良少年・いがみの権太がみせた一世一代の大芝居を悲しくみせた聖也、佐野岳の華やかなアクロバットなども印象的。それぞれがそれぞれに必死に生きたその生き様が、義経を中心とした大きな時代のうねりに巻き込まれていくさまが、悲劇的かつドラマチックに立ち上がる。

膨大な情報量のある原作の筋がわかりやすく整理され、古典作品の再発見、という意味でも価値のある作品。もともとファンタジックな時代モノを得意とする30-DELUXの作風ともマッチし、彼らと歌舞伎作品との幸せな融合をみた。さらに能舞台のようなセットや、人形浄瑠璃を取り入れた演出など、歌舞伎のみならず、日本の伝統芸能を果敢に取り入れたところにも意欲を感じる。30-DELUXのこれからの展開にも期待を抱かせる作品だ。

初日を終えた水は、「やっぱりお客さまが入ると違いますね。前説から超・盛り上がって、温かい空気を感じました。ここからがスタート、集中して一回一回丁寧に挑みたいと思います」と手ごたえを感じている様子。公演は7月20日(月・祝)まで同所にて。その後愛知、福岡、大阪でも上演される。チケットは発売中。

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