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 アーノルド・シュワルツェネッガーが12年ぶりにシリーズにカムバックした『ターミネーター:新起動/ジェニシス』が公開中だ。

 本作のプロデューサー、ミーガン・エリソンは「この映画は、リメークでもリプート(再起動)でも続編でもない。ジェームズ・キャメロンが創造した作品を基にしたリイマジニング=再構想版だ」と語る。

 さらに「皆が親しんできた主人公たち(ターミネーター、サラ・コナー、ジョン・コナー、カイル・リース)が、タイムトラベルの性質を利用して、異なるタイムラインの世界へと旅立ち、全く新しい方向へと向かう」と語るように、本作は、第一作と同じ地点(2029年→1984年)からスタートしながら、物語は別の時間軸をたどっていく。

 かつて『ターミネーター』(84)から『ターミネーター2』(91)の間に、シュワルツェネッガーがスターとなったことで、彼が演じたターミネーター=殺人サイボーグも悪役からヒーローへと変容したが、今回は実際に年を取ったシュワルツェネッガーを不死身のターミネーターとして存在させ続けるには…という難題があった。

 そこで、サイボーグの骨格を包むのは人間の皮膚組織なので外見は年を取る。しかも、人間と一緒に暮らしてきたので内面も人間のように変化しているという設定を作り出した。さらに、ターミネーターをサラ(エミリア・クラーク)の“守護神”へと変化させ、サラは彼を“ポップ=おじさん”と呼び、まるで父娘のような関係を築いている様子も描いた。

 いささか強引な展開だが、シュワルツェネッガーが演じることで見る者を納得させたのも確か。結局このシリーズは、どう設定を変えようがシュワルツェネッガーありきなのだ。

 “シュワちゃん”という愛称を命名した映画評論家の淀川長治さんは「オーストリア出身のシュワちゃんは、ただの筋肉マンではなくてどこか風格を感じさせるところがある」と語っていたが、本作の白髪になって顔のしわも増えたシュワちゃんはなかなか渋くていい。だから彼が吐く「古いがオンボロではない」というせりふも含蓄のある言葉となった。

 本作は、新旧ターミネーターの対決を可能にした特撮の進歩を見ながら、同時にアーノルド・シュワルツェネッガーという俳優の変化を見る楽しみがある。(田中雄二)