「プラチナ触媒」技術を「新鮮スリープ野菜室」と「真空チルドルーム」に搭載した「真空チルド」Xシリーズ

0.8気圧のチルドルームで保存した食材の酸化を抑制する「真空チルド」で冷蔵庫市場をリードしてきた日立アプライアンスが、野菜や肉、魚などの鮮度を向上する技術「プラチナ触媒」を世界で初めて家庭用冷蔵庫に搭載する。

「プラチナ触媒」は北海道大学が開発。日立が8月13日から発売される業界最大の定格内容積730リットルとなる「真空チルド」R-X7300Fなど12機種に搭載する。X7300Fはオープン価格だが、税別実売は46万円前後を想定している。

●北海道大学と共同開発で冷蔵庫に搭載

プラチナ触媒の技術そのものは、自動車のマフラーや工場の煙突などで広く使われている。高温の熱エネルギーによって触媒作用が発揮される。

ただ、冷蔵庫のような低温の状況ではプラチナ触媒の効果は発揮されなかった。今回のプラチナ触媒は、低温でも野菜などから発生するエチレンガスやニオイ成分を、炭酸ガスと水に分解できる。北海道大学が開発した世界初の技術で、日立との共同研究によって冷蔵庫に搭載されることとなった。

X7300Fでは、このプラチナ触媒を冷蔵庫の一番下の「新鮮スリープ野菜室」と上段の庫内にある「真空チルドルーム」に搭載した。

北海道大学が開発したプラチナ触媒を冷蔵庫に応用しようと考えたのは、日立アプライアンスの空調事業部栃木空調本部開発センタの船山敦子主任技師だ。「北海道大学からリリースが発表されたのを見てすぐに(北大の)触媒化学研究センターの福岡淳教授に連絡したら、私どもが一番最初にコンタクトしたということで優先的に共同開発をすることになった」と、経緯を語った。

●高濃度の炭酸ガスが野菜の鮮度を保つ

従来の冷蔵庫では光触媒が使われていた。日立の場合は、野菜室に設置した白色LEDを光触媒に照射して、野菜から出るエチレンガスを炭酸ガスと水に分解していた。野菜そのものの呼吸からも生じる炭酸ガスは、濃度が濃くなるほど野菜の呼吸活動を抑える効果がある。それだけ野菜の鮮度が保たれる。

新しく採用したプラチナ触媒は、エチレンガスやニオイ成分が触れるだけで、光触媒よりも約2.1倍の炭酸ガスを生成するという。日立では、野菜の呼吸活動の抑制が、野菜が眠っているようであることから「スリープ保存」とネーミングしている。

発表会では、実際に光触媒とプラチナ触媒で分解されて生じる炭酸ガスの濃度の違いが分かるデモを実施した。光触媒の炭酸ガス濃度が3785ppmであったのに対して、プラチナ触媒の炭酸ガス濃度は約2倍の8138ppmになった。また、プラチナ触媒で7日間スリープ保存した小松菜と、スリープ保存しなかった小松菜でも、その鮮度の違いは明らかだった。

プラチナ触媒は、同社の冷蔵庫を象徴する機能である「真空チルドルーム」にも搭載。肉や魚から出るニオイ成分を、炭酸ガスと水に分解する。チルドルーム内の炭酸ガスの濃度が高まることで、肉や魚の表面の傷みの原因となる酵素の働きを抑制する。

デモによるロールケーキの比較では、冷蔵室に保存してだけのロールケーキは水分も抜けて乾燥しているようだったが、プラチナ触媒のスリープ保存で真空チルド保存したロールケーキは、指で押しても弾力があり、水分が残っていることが確認できている。

低温の環境でも分解作用が働くプラチナ触媒の技術を搭載した日立の「真空チルド」シリーズは、冷蔵庫にさらなる新風を吹き込みそうだ。なお、税別実売46万円前後のXシリーズのR-X7300Fをはじめ、普及タイプの同26万円前後のR-S4200Fまで12機種をラインアップする。