第三者員会の報告書を受けて辞任した東芝の田中久雄社長

2008年度(09年3月期)から14年度の長期にわたって累計1518億円の利益水増しによる不正会計問題が第三者委員会(上田廣一委員長)の調査報告書で指摘されている東芝は7月21日、歴代の3社長が辞任した。

同日付で田中久雄社長と佐々木則夫副会長、西田厚聰相談役が辞任した。このほかにも下光秀二郎副社長、深串方彦副社長、小林清志副社長、真崎俊雄副社長、久保誠監査委員会委員長がすべての役職について辞任。前田恵造専務は、代表執行役と取締役の役職が解かれた。

7月22日からは後任に室町正志会長が、暫定的に社長を兼任する。日常業務の遂行は、牛尾文昭執行役上席常務が代表執行役上席常務に就任してあたる。

田中社長は会見で「(東芝の)140年の歴史の中でブランドイメージが大変、大きく毀損したと認識している。一朝一夕で信頼を回復することはできない。室町新社長が、今後の再発防止策をつくり、社員が一丸となって一日一日全力で取り組み、みなさんから理解していただけるまで続けなればならない。時間がかかっても、やり遂げなければならない」と語った。

●「チャレンジという言葉を使った覚えはない」

問題となっている利益の考え方については、「事業を経営していくなかで、きちんと雇用を守り、事業の拡大を目指す中で研究開発や設備投資、そしてもっとも大切な会社の経営理念のひとつでもある豊かな社会への貢献を継続的かつ持続的に行うには、利益は大変重要。利益の創出そのものが悪いとは思っていない。ただ、利益が捻出される過程で、今回のような不適切な会計処理があってはならない。厳粛、適正な会計処理という認識が(一般の考え方とは)ずれていた」(田中社長)と語った。

一方で第三者委員会の調査報告書で指摘のある社長月例などで、「チャレンジ」と称した目標達成を強く迫ってプレッシャーを与えていたことについては「私が直接的な指示をしたという認識はない。必達目標値という言葉は使っていたが、チャレンジという言葉を使った覚えはない」(田中社長)と否定した。

●暫定的に室町会長が社長を兼務

後任の室町会長は、「今回の事態を招いたことを真摯に受け止めて、ステークホルダーのみなさまに大変なご迷惑をおかけしたことに心よりお詫び申し上げる」と語ると同時に、9月以降の自身の社長続投は「まったくの白紙」だという。

20万人の東芝社員にとっては、一刻も早い事態の収束と新体制での再発防止策の策定が急がれる。新経営陣の公表は8月中旬を予定。それまでに第三者委員会の報告を踏まえた上で、経営体制やガバナンス、再発防止策などについて社外専門家の助言を受けながら新経営体制に反映させていくという。

2014年度(15年3月期)の決算発表は8月31日に大幅にずれ込む予定。9月下旬に開催予定の臨時株主総会で株主からの信任を得てから新体制が正式にスタートする。