白洲迅

 連続ドラマ「愛してたって、秘密はある。」(17)で福士蒼汰演じる主人公・奥森黎の友人・安達虎太郎役を演じ、「あのイケメンは誰?」と人目を引いた白洲迅。当の本人も「反響は大きく、転機になった作品です」と笑みをこぼす。今後ますます活躍の場を広げるであろう白洲が、芝居を続ける上での心構えや、目指す役者像、主演映画撮影時のエピソードなどを語ってくれた。

 芸能界に入るきっかけは高校在学中に受けた第22回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト(10)。母の友人の長年の勧めで渋々応募するも、ファイナルまで進めなかったことが負けず嫌いのハートに火をつけ、声を掛けてくれた芸能事務所に所属することを決意。だが、当初は役者業に対してそれほどの気概はなく、「やりたいこともないし、取りあえず、今の自分とかけ離れた世界に足を踏み入れてみようかな」という好奇心が強かったことを打ち明ける。

 デビュー作は、城田優、斎藤工、瀬戸康史ら、数々の人気俳優を輩出した大ヒット舞台シリーズのミュージカル『テニスの王子様』(11)。「芸能界一本にするのは怖かった」ということもあり、入学したばかりの大学を休学して稽古に通うが、やがて「役者の仕事に楽しさや、やりがいを見いだせた」と歩むべき人生の道を一本に絞った。

 それからはコンスタントに映画、ドラマ、舞台に出演し続け、おととしの「愛ある」でついにプチブレーク。しかし浮足立つことなく、「福士くんや川口春奈ちゃんなど同年代の役者と共演することがあまりなかったので、その環境や、誰が主人公を追い詰めている犯人なのかが分からないまま展開するミステリードラマだったから、視聴者の関心が虎太郎にも寄せられたんじゃないかな」と、注目された理由を冷静に分析した。

 とはいえ、同ドラマが転機となり、この頃に心境の変化があったことも吐露。「それまではどんなに話題の作品に出ても、自分が注目されても、自信につながらなくて、どうしたらいいのか悩んでいたけど、考え過ぎなのかなぁと思うようになって…。そうしたら気持ちが楽になりました。最近は自分の芝居が自由になっている気がして、今、すごく楽しいです」と爽やかな笑顔を見せた。

 自己不信から脱却した白洲は、芝居に向ける情熱をたぎらせる。その要因は昨年の舞台「シラノ・ド・ベルジュラック」、ドラマ「刑事7人」で共演した名優・吉田剛太郎との出会い。吉田について、「芝居が大好きで命を懸けていて、技術もすごくてポテンシャルも高い。こんな人っているんだ…と思いました」と感激しつつ、「得るものが大きすぎてそしゃくし切れていない」と悔しさものぞかせた。

 また「舞台と映像では瞬発力や演じ方に違いはあるけど根本は一緒。ただ、人と人とのやり取りであることにも気付かされました」とうれしそうに話すと、今後は「舞台と映像を両立してやっていきたい」と言葉に力を込めた。とりわけ、舞台は「好き嫌いではなくて修行の場。ちゃんと芝居の勉強をしたいから、舞台がないと不安になる」と特別な思いも明かした。

 そんな白洲が今回主演を務めるのは、漫画『Back Street Girls』(ジャスミン・ギュ作)を実写映画化した『BACK STREET GIRLS -ゴクドルズ-』(2月8日公開)。ある事件で不始末を起こした3人のやくざが、組長の命により、やむなくタイで性転換&全身整形してアイドル活動をする姿を描いたピンキーバイオレンス映画。白洲(健太郎)、花沢将人(リョウ)、柾木玲弥(和彦)がやくざパートを、対になるアイドルパートを岡本夏美(アイリ)、松田るか(マリ)、坂ノ上茜(チカ)が演じており、男性陣はアイドルになっても消えない男としての幻影としても登場する。

 白洲は「漫画は爆笑しながら読んだけど、同時に実写化したときの想像がつかなくて不安が募ったし、26歳のこの歳でやくざ役ができるとは考えていなかったので、やり切れるか心配でした」と回顧。さらに、一人の人物を男女の役者で同時に演じることも悩みの種だったという。

 そのため、普段は演じる上で人に相談することはないが、このときばかりは岡本と話し合いを重ねて役作りに励み、白洲は岡本演じるアイリに、岡本は白洲演じる健太郎にすり寄る努力をしたとか。その作業は「大変だったけど、すごくいい経験」だったそうで、やくざ役も「男くさくやれた」と充実感をにじませた。アクションや殺陣のシーンも満足の出来で、「あまり練習時間がなかったけど楽しんでできました。まだまだだけど、以前よりアクションが好きになり、自信も持てるようになりました」と声を弾ませた。

 そして「原作やアニメファンが悲しい気持ちにならないようにきちんと演じました。漫画の良さが映画にも踏襲されています。プラス、アクションや格好良さ、人間模様、それぞれの葛藤が描かれていて、より厚みができたと思います」とアピールした。

 本作を経ての今後の展望を尋ねると、「女子のスクール水着を着たり、首に爆弾を付けられたり、変わった役は結構しているので、普通にキラキラした格好いい役で恋愛ものがしたいです」とリクエスト。

 ビジュアルはイケメン枠にはまるだけに、逆にそういう役が少ないことに驚いたことを伝えると、「そうですか?」とはにかみながら、「東山(紀之)さんみたいな、たくさんの格好良い役者を間近で見て、自分も俳優として、男として、しっかり格好つけきることは大事だと考えるようになったので、それを一つの目標にしたいです」と目を輝かせた。本作でも男気あるキリリとしたやくざ役を演じ切った白洲。今後もイケメン枠で本領発揮する姿に期待したい。

(取材・文・写真/錦怜那)

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