第一の工程となる「絵コンテエリア」には、作品の設計図である直筆の絵コンテが展示されており、アニメーション研究家の氷川竜介氏が読み応えのある解説文を添えている。

「絵コンテエリア」には『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』の絵コンテが展示されている
細田作品の絵コンテ集は書籍としても販売されているが、やはり実物を見るとその膨大な量に圧倒される
氷川竜介氏による展示キャプションでは、シーン毎の演出意図などが分かりやすく解説されている

「絵コンテエリア」を抜けると「キャラクターデザインエリア」へ。過去の細田作品でキャラクターデザインを手がけたのは、『新世紀エヴァンゲリオン』でもおなじみの貞本義行氏。色彩の息吹が吹き込まれる前とはいえ、貞本氏の繊細なタッチで描かれたキャラクターたちは今にも動き出しそうな気配を漂わせている。

「キャラクターデザインエリア」には、過去三作品でキャラクターデザインを手がけた貞本義行氏のイラストが並ぶ
部屋に並ぶ真琴や千昭のパネルを見ていると、彼らが今にもしゃべり出しそうな感覚さえ覚える

『バケモノの子』展の見どころ その2 制作の裏側が垣間見える原画コーナー

絵コンテ、キャラクターデザインの工程を経て、いよいよ次は原画の展示コーナーだ。

通常のアニメーション制作は、まず原画マンが白い用紙に原画を描き、その上に作画監督が色付きの用紙を乗せて細かい部分を描き足すことで「修正原稿」とする。しかし、細田作品では、修正原稿の上に監督自身が別の色の紙を乗せてさらに修正をかけるそうだ。

『バケモノの子』展の原画展示コーナーでは、作画監督や細田監督の緻密な修正指示をじっくりと閲覧することができる。

筆者が特に驚かされたのは、『おおかみこどもの雨と雪』の劇中で雪が持っていた水筒のデザインに関する修正指示だ。その妥協を感じさせない指示書きは、「神は細部に宿る」という名言をまさしく体現している。

修正指示からは、作業の佳境であろうと妥協を許さない制作陣のこだわりを感じる(©2012 W.C.F.P.)
細田作品の象徴である入道雲の原画には「雲力!!」という謎の指示が……(©2006 TK/FP)