舞羽美海  撮影:源 賀津己 舞羽美海  撮影:源 賀津己

アイルランドに生まれ、19世紀末のヨーロッパで一世を風靡した作家オスカー・ワイルド。その唯一の長編小説で、究極の美青年ドリアン・グレイの数奇な運命を描いた『ドリアン・グレイの肖像』が今夏、G2脚本、グレン・ウォルフォード演出で舞台化される。中山優馬演じるドリアン・グレイと恋に落ち、やがて自殺に追い込まれる女優シビルを演じるのが、舞羽美海だ。

舞台『ドリアン・グレイの肖像』チケット情報

「シビルは小さな劇場でヒロインを演じている10代の女性。“芝居バカ”で、自分が生きる場所はここしかない!と思っているところは私自身とリンクします。そんなシビルが愛を知り、芝居ができなくなって死を選ぶところまで表現できるのは、女優として幸せなこと。これまでハッピーな役が多かったので、今回は大きな挑戦。自分の殻が破れるんじゃないかと思っています。原作を様々な翻訳で読みながら、イメージを膨らませています」。

舞羽は役作りのため、稽古に入ると普段の生活も変えることがあるという。「舞台上でも、素の自分ってどこかに表れると思うんです。私は性格的に大雑把なところがあるので、いかに繊細に演技を作るかが生涯の課題。ドリアンの人生の歯車を最初に狂わせていく役なので、その意味でも繊細に、でも守りに入らず大胆に演じたいですね」と意気込む。

舞台上に普段の自分が表れるとする彼女の考え方は、美と若さを保つドリアンの老いや醜さを肖像画が映し出すという本作の世界観に通じるかもしれない。「そうですよね。嘘をどれだけ本当にできるのかといったことも、この作品のテーマ。まず中山さんは、肖像画から出て来たように美しい方なので、それだけでこの作品の世界観の象徴のような存在。そんな中山さんとどんなキャッチボールができるか、私自身、楽しみにしています。オスカー・ワイルド特有の耽美な世界を感じつつ、舞台ならではのリアルさもあるものに仕上がるのではないでしょうか」。

ドリアンは、『ロミオとジュリエット』のジュリエットを演じるシビルを観てひと目惚れする。既に宝塚歌劇団時代、ミュージカル版『ロミオとジュリエット』で同役は経験済み。「ミュージカル版では言葉も現代的でしたし、歌で感情表現できましたが、シェイクスピアの詩のような台詞をストレートプレイで表現するのは難しい」としながらも「シェイクスピアといえばお芝居の基本ですから、勉強し直すつもりで今、じっくりと読んでいます。女優として再スタートしたいんです」とする表情からは、決意の強さがうかがえた。

今年はこの『ドリアン・グレイの肖像』、そして秋にはミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』ヒロイン・サラ役と、大役が続く。「この2作で、今年こそ、今までと違う自分に変わりたい。一生分を賭けるくらいの気持ちで、逃げずに自分をさらけ出して臨みたいです」。

8月16日(日)から18日(火)・9月1日(火)から6日(日)まで東京・新国立劇場 中劇場、8月22日(土)から26日(水)まで大阪・森ノ宮ピロティホール、29日(土)・30日(日)福岡・キャナルシティ劇場にて。

取材・文:高橋彩子