NHKの「第48回 NHK番組技術展」

NHKは2月11日~13日の3日間、NHK放送センターで「第48回 NHK番組技術展」を開催した。会場では、放送現場ならではの発想で創意工夫を凝らしたさまざまな放送機器や取り組みを紹介。2018年12月に本放送を開始した4K8Kに関する最新の番組制作技術やAIを活用した開発など、計23項目の展示が並んでいた。

会場は、4K8K、番組制作、AI利活用、緊急報道・放送確保の4つのテーマでコーナーを分割。ブースには、開発に携わった技術者が説明員として立ち、来場者に熱心に解説していた。

4K8Kについてのコーナーでは、国際宇宙ステーションからの8K映像や、8Kカメラで深海の高精細映像を撮影するプロジェクトを展示。効率良く4Kと既存の放送を両立できるよう、4K-HDRの世界観を損なうことなくSDRに一括変換する手法なども紹介していた。これまでは4K-HDRとSDRの映像は、別々で制作する必要があった。

番組制作コーナーには、関係者が1カ所に集まる必要があった編集後の番組の試写に、遠隔から参加できるシステムを展示していた。また、松江放送局が開発した、クロマキーセットを用意するのが難しい地方局でも背景の分離、合成するシステム「keydream」が注目を集めていた。

AI利活用では、顔認証による“番組権利情報 作成基盤”に熱い視線が注がれていた。従来は、権利入力担当者が映像を見ながら手で出演者の情報(誰が何分に出演したかなど)を入力する必要があった。時間も労力もかかる作業だったため、改善しようと出演者の自動抽出システムを開発しようとしたのだという。

その他、スピード翻訳システムや10分程度のリポート動画をAIを用いて自動要約するシステムなどが展示されていた。動画要約システムを開発したのは青森放送局。同局では、要約した番組を公式Twitterで配信することで、番宣効果を期待。人の手で編集していた頃よりも各段に要約が早くなったと、担当者は話す。今後の展望としては、アーカイブのサムネイルとしても活用していくそうだ。

緊急報道・放送確保のコーナーで関心を集めたのは、公共インフラ不要の遠方監視システムだ。太陽電池と免許不要の特定小電力無線モジュールによる多段リレー中継器で、公共インフラ喪失時でも遠方にある放送所の各種情報を放送会館まで無線伝達できるようになる。ビニールハウスの監視など、放送事業以外でも活用できる可能性がありそうだ。

コンテンツ制作や業務改善システムなど、さまざまな分野の展示には、現場の利便性や効率の向上を目指す姿勢が現れていた。今回の展示では、実用に向けて検討を進めている段階の技術も散見されたが、今後さらに業務が効率化されれば、コンテンツも充実してくるかもしれない。