『KANO~1931海の向こうの甲子園~』のマー・ジーシアン監督

かつて夏の甲子園に旋風を巻き起こした台湾代表の高校球児たちがいた。日本統治下の1931年に甲子園の土を踏んだ嘉義農林学校の実話を描いた感動作『KANO ~1931海の向こうの甲子園~』。日本人、台湾人(漢人)、台湾原住民からなる嘉農野球部を率いた近藤兵太郎監督役で主演を務めた永瀬正敏が、日本人として初めて、台湾版アカデミー賞こと金馬奨の主演男優賞にノミネートされるなど、高い評価を得た本作のブルーレイ&DVDリリースを前にマー・ジーシアン監督が来日した。

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俳優として活躍してきたマー監督にとって、本作は長編監督デビュー作となった。「13年ほど前に台湾原住民の学生の役をやったことが、私自身の原住民としてのアイデンティティを芽生えさせるきっかけになりました。俳優としていろいろな役を演じてきたことを嬉しく思っていますが、自分で物語を語りたいという思いが強くなり、メガホンを執りました」

そしてこの物語を選んだ理由を次のように語った。「この映画で見せたかったのは、日本人、台湾人、台湾原住民が同じ目的に向かって、とても強い繋がりと絆を持って頑張ったというプラスの事実があったこと。これは私が作り出した物語ではなく、実際にあった出来事なのです」

本作の製作を通じて、自らも人種を超えた繋がりを感じたマー監督。主演の永瀬とも「親友になれた」と笑顔を見せる。「もし近藤監督役が永瀬さんでなければ、この映画はこんなにも素晴らしいものにはならなかったと思います。甲子園での最後の試合のときに、ピッチャーにアクシデントが起こります。そのとき、監督のところにみんなが集まり、監督がみんなに話をする。あのシーンを観る度に、涙が止まりません。私たちの間には、映画の中だけでなく現実に強固なチームワーク、心の繋がりが出来ていました。永瀬さんのあの演技には、本当に感動しました」

『KANO ~1931海の向こうの甲子園~』
8月5日(水)ブルーレイ&DVD発売取材・文・写真:望月ふみ