みんながすぐ心が動かされる絵

――本展でアレックスさんが好きな作品を教えてください

私がたくさんの原画を見て感じるのは、シェパードがどのように成長したか、ということ。

成長したというのは、プーと仲間をどのような形で描くべきなのかシェパード自身が少しずつわかってきた、ということを感じるんです。

初期の絵を見ると、考え、悩みながらスケッチしているのが非常によく分かります。

それがだんだん後半になっていくと、彼がキャラクターを全部知り尽くし、絵を描く時に全く躊躇なく、まるでアスリートのように筋肉と頭が連動して何も考えなくぱっと描けるようになってくる。

そういった芸術家の進化・成長の過程が、非常に面白いと思います。

「ながいあいだ、三人はだまって、下を流れてゆく川をながめていました」、『プー横丁にたった家』第6章、E.H.シェパード、鉛筆画、1928年、 ジェームス・デュボース・コレクション © The Shepard Trust

特に大好きな絵は、皆さんも同じかもしれませんが、プー棒投げ橋の非常に有名な絵がありますよね。

橋の上でちっぽけなコブタと中くらいなプーと大きなクリストファー・ロビンがいる絵、あれは非常にチャーミングなものだと思います。

あの絵を見ると、みんなすぐハッピーになるのではないかと思います。

年齢や文化を問わず、みんながすぐ心が動かされるような絵なんですね。

世界中で最も愛されるている絵のひとつではないかと思います。

そんな絵を今回の展覧会でお見せできるということを大変嬉しく思います。

 

お話と絵を見て、プーを1から知ってほしい

続いて、日本での企画を担当した、フジテレビのプロデューサー中里弘毅さんにインタビュー。

 

――日本向けに変えた部分などありますか?

基本的にはイギリス・V&Aの展示の世界巡回企画なので、現地の展示をベースにしています。

V&Aで初めてとなる子供を含めたオールターゲットに向けた展覧会として、滑り台や実際の階段が作られていたり、特に子供目線を意識した内容になっていました。

一方、イギリスと日本の文化の異なる点は、日本では児童文学や絵本というものが大人の方にも広く親しまれていることが挙げられます。

日本でプーの展覧会を開催するにあたり、大人の方もかなりいらっしゃるので、日本では子供向けにせずに、プーを90年という長い歴史のある文学作品として捉える、ということを意識したのが、イギリス版との違いです。

実際、アトラクション的なものはそれほど多くせずに、きちんと原作に触れるということをメインにしています。

 

イギリスではプーさんの原作を、子供からおじいさんまで幅広い世代が知っています。

一方日本では、キャラクターのビジュアルやディズニーアニメのイメージでプーさんを知っていても、原作の内容や、極端に言うとプーさんの発祥がイギリスだということを知らない方もいるかもしれません。

今回の展示ではその辺の基本情報も丁寧に説明するようにしたので、ただ原画を見るということではなくて、プーさんを1から知っていけるような内容にアレンジしました。

展示を見ていただくと、今まで持っていたプーさんのイメージとの違いや、知らなかった背景などがきっとあると思います。

ディズニーランドがある日本と、ディズニーランドがないイギリスでは、プーさんの受け止められ方が全く違います。今回の展示は、より深くプーさんを知ることができるチャンスだと思います。

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