液晶テレビ事業について「あらゆる可能性を考えていきたい」と語るシャープの高橋興三社長

シャープの高橋興三社長は7月31日、第1四半期(2016年3月期)の決算発表で「5月14日に発表した中期経営計画の考え方ではしんどい。だいぶ状況が変わってきた。液晶テレビ事業は決めたことに固執するのではなく、あらゆる可能性を考えていきたい」と、同事業の分社化に含みをもたせた。5月に発表したばかりの液晶テレビ事業の自前主義からの転換もありうることを示唆した。

第1四半期の決算は、デジタル情報家電部門のほとんどを占める液晶テレビの売上高は641億円(前年同期比74.8%)。通期では3400億円(前年同期比91.9%)を計画しているが、第1四半期でまだ18.8%しか達成していない。デジタル情報家電部門の営業損益は、通期で30億円の赤字を計画している。だが、第1四半期だけで173億円(75.3%)の赤字。同部門の上半期の営業損益は90億円の赤字の予想なので、次の第2四半期(7~9月)で83億円の黒字にしなければ未達の可能性もあるという厳しい内容になっている。

●米国の液晶テレビの生産と販売から撤退

同日、ブラジルを除く米国の液晶テレビ生産と販売から撤退することも合わせて発表。米国におけるシャープ、アクオス、クアトロンなどのブランドは中国の家電大手ハイセンスの子会社、ハイセンスHK(Hong kong)に供与するとともに、メキシコ工場の売却の契約も締結した。シャープのメキシコの生産会社の株式譲渡は来年1月を予定。第1四半期の決算で生産設備など23億円の特別損失を計上した。クアトロンにはシャープ独自の技術が反映されているが、今回はあくまでもブランドの供与で、技術供与ではないという。

同社が北米市場の液晶テレビ事業に参入したのは2001年。だが、近年の市場競争の激化に伴い、予想を超える厳しい収益状況に陥っていた。

固定費を削減するため、3500人に及ぶ早期希望退職の募集を開始。12年に実施した約3000人規模の早期退職の募集に続く2度目の実施となる。役員や従業員の給与削減や賞与カット、福利厚生や諸手当の見直しもすでに実施しているという。

●営業損益で前年上回ったのは「電子デバイス」部門のみ

シャープの第1四半期の売上高は6183億円(前年同期比99.8%)と前年並みだったものの、営業損益は287億円の赤字(前年は46億円の黒字)、経常損益は333億円の赤字(前年は54億円の赤字)、純損益は339億円の赤字(前年は17億円の赤字)と前年から大きく落ち込んだ。デジタル情報家電、通信、健康・環境、エネルギーソリューション、ビジネスソリューション、電子デバイス、ディスプレイデバイスの7つある部門のうち、売上高で前年をクリアしたのはビジネスソリューションと電子デバイスの2部門だけ。営業損益で前年同期を超えたのは電子デバイス部門だけだった。