「吸込力競争とは違うところで戦ってきた」と語る三菱電機ホーム機器の田代正登社長

三菱電機は9月1日からサイクロンクリーナー「風神」のTC-ZXEシリーズを発売する。最上位機種のTC-ZXE30Pの価格はオープンで、税別の実勢価格は8万円前後、TC-ZXE20Pは6万円前後の見込み。

●サイクロン室のレイアウト変更で2割も軽量化

8月6日に開催された新商品発表会で三菱電機ホーム機器の田代正登社長は、事業戦略について次のように語った。「われわれは他社が吸込力競争をしているときから、違うところで戦ってきた。風神では(サイクロンのゴミ分離構造による)吸込力の持続技術やきれいな排気、Be-K(ビケイ)では軽量化を中心に開発してきた。新しい風神は、吸引力や排気の基本性能を保ちながら軽さにこだわった」。

軽さについては、14年度の従来モデルの本体質量3.7kgから、2.9kgに一気に約21%も軽量化した。昨年モデルはゴミと空気を分離するサイクロン室を本体の上に斜めに配置しており長い吸込口があった。新商品ではサイクロン室を起こすように角度をつけて配置し、空気が上から下に旋回するようにしたことで風路を短くした。もちろん、強い吸込力は落ちることなく持続する。

さらに、軽いアルミフレーム素材の新型モーターを搭載することで、モーターの重さを820gから695gに約15%低減した。風路の見直しとモーターの改善による合わせ技で、2割もの軽量化に成功。本体サイズもコンパクトになった。

●きれいな排気から生まれた「掃出し」機能

きれいな排気では、IEC(国際電気標準会議)の規格に準拠する第三者認証機関のSLG(ドイツ)で、最高位のファイブスターを取得。最終捕集率99.999%を実現している。これは10万個ある粒子を取って1個しか取り残しがないというレベルだ。サイクロン室でゴミの99.9%を捕集し、後段のHEPAフィルターとULPAフィルターで最終的な捕集率を達成した。

きれいな排気の実現は、新しい画期的な提案機能を生み出した。それが「エアブロー」だ。靴と一緒に玄関に入ってきた細かい砂ゴミや窓のサッシレールのほこり、落ち葉や網戸のほこりを、クリーナーで吸い込むのではなく、本体の排気口から吹き出す排気を利用して吹き飛ばすというものだ。

エアブローの構造はこうだ。通常のクリーナーは熱くなりやすいコードリールを冷やすために、モーターから入った排気の一部を利用して冷却する。新しい風神では、逆にコードリールの小さな口から空気を吸い込むことで冷却して、モーターの風路と一緒にして排気する。モーターを通る排気は分散されなくなるので風速が一気に強まる。具体的には、従来は風速4メートルぐらいしかなかった排気が、風神では約50メートルにもなる。この強い風速の排気を利用して、ゴミを吹き飛ばすのだ。

掃き出し掃除をする際は本体からホースを外して排気口に装着。手元グリップに「エアブロー」専用のアタッチメントを設置して、「強」などのボタンを押せば手元から強い風が出てくる。まさにエアブローは、きれいな排気でなければ実現できない機能なのだ。

虫をクリーナーで吸い込むのに抵抗がある女性は多いだろう。虫が見えてしまうスケルトンデザインのサイクロンならなおさらだ。そんなときもエアブローを使って部屋の外に吹き飛ばせば解決。新しい風神の「エアブロー」は、ユーザー発想のアイデア次第で、いろんな使い道が生まれそうだ。