楽天市場への出店に続き「国内のリアル店舗にも力を入れていく」と語るファーウェイ・ジャパンの呉副社長

SIMフリースマートフォンの「P8 Lite」など国内モバイル市場で存在感を増しているファーウェイ・ジャパン(華為技術日本)の呉波副社長端末統括本部統括本部長は、すでに当サイトで報道(http://bcnranking.jp/news/1508/150806_31246.html)したように下半期(2015年12月期)に新しいウェアラブル端末を国内に投入すると明言した。「2015年はリテール元年」(呉副社長)として国内のリアル店舗での展開に力を入れているほか、スマートフォン(スマホ)、タブレット、ウェアラブルなどの各端末で新基軸の製品を相次ぎ投入する計画だ。

●ショップ in ショップでリアル店舗を展開

呉副社長は、ファーウェイ・ジャパンの下半期の重点施策として、国内の家電量販店を含むあらゆるリアル店舗での展開を強化することを掲げた。具体的には、店舗の中にファーウェイのオリジナルショップを展開するショップ in ショップや、ファーウェイ専用のディスプレイゾーン(オリジナルコーナー)の設置を順次拡大する。より多くのリアル店舗で「HUAWEI」のロゴをユーザーに露出し、ブランドを浸透させることが狙いだ。

ECショップでは、今年5月20日に楽天が運営するインターネット・ショッピングモールの楽天市場で、ファーウェイ公式のオンラインストア「Vモール」をオープンした。ただ、現段階では「中国と違って日本ではECサイトでハンドセット(スマホなどのモバイル端末)を購入する比率はまだ低い」と、呉副社長は分析している。

あくまでECショップは、自ら新しい市場を創造するという意図で取り組んでいるようだ。リアル店舗にしろ、ECショップにしろ、販路は異なるが「SIMロック解除という日本政府の施策で、ビジネスチャンスが見込まれている。当社はチャンス待つのではなく、今から種をまき、木を育てていく」(呉副社長)と、全方位でモバイル端末の販売戦略を練っている。

●コンシューマ事業の売上構成比を50%に

ファーウェイが国内で販売するスマホのラインアップは決して多くない。主力モデルは今年5月にVモールのオンライン限定シリーズで販売している「honor6 Plus」と、7月に発売した「P8 lite」だ。ラインアップをむやみに増やさず、むしろ高品質なモデルに絞り込んで勝負する戦略をとっている。

その理由について呉副社長は、「世界170か国以上で展開するファーウェイがプレミアム機種に絞り込むことで、部品などは1000万台単位で調達できるからだ」と、グローバルで展開するファーウェイのグループ力を生かし、同等価格の競合他社製品の上をいく高品質なスマホを出すことを可能にしているという。

高品質な国内部品メーカーの部品を積極的に調達して搭載しているのもファーウェイの特徴だ。国内で調達する年間の部品総額は17.5億ドル(2100億円、1ドル=120円換算)で、毎年30%伸びている。同社は国内で、法人向け製品も開発・販売しているが、呉副社長は「(売上高は非公表だが)売上高に占める国内コンシューマ事業の割合を、14年度の20%強から15年度に50%まで高める」と明言。SIMロック解除などを契機として、モバイル端末の大幅な販売強化に意欲を見せている。

●すべての端末をネットでつないで付加価値を

一方、世界的に同社は、2014年からウェアラブル機器に力を入れている。好調なSIMフリースマホやタブレット端末、ルーターなどの商品群をネットワークでつなぐことで、ユーザーに新たな価値を生み出すためだ。

楽天の「Vモール」では、「honor cube(オナーキューブ)」という端末に保存した写真や映像、音楽を取り込みテレビの大画面やタブレットなどで閲覧できるホームデータサーバーを販売している。最大4TBまで拡張可能で、スマホやタブレットなどのモバイル端末が、家庭内のプライベートクラウドのように使える。たとえば、ウェアラブル端末を装着したまま帰宅すれば、自動的に1日の活動量データを吸い上げたり、家族全員でスマートフォンやタブレット端末で確認できるといったイメージだ。

将来的には、IoT(モノのインターネット)も視野に入れている。すでに、中国内のスマートハウスや産業用の新築物件向けでは、スマホの操作で照明などの明るさを変えられるといったシステムを販売している。こうした新しいシステムやサービスは、今後、国内に続々と投入されていく予定だ。(BCN・細田 立圭志)