「子育ての方針を教えてください」と質問すると、「人に迷惑をかけない子に育ってほしい」と答える人がいます。

でも、子どもは周りに迷惑をかけながら成長します。それに迷惑をかけないで育つことなんて実際できませんよね。そもそも「人に迷惑をかけない子」って存在するのでしょうか。迷惑をたくさんかけて、助けられて育つのが人間のような気がします。

『発達障害に生まれて』(松永正訓著)ノンフィクションのモデルとなった立石美津子がお伝えします。

自立とは

何でも一人で出来るようになることが自立ではありません。人は出来ないことの方が多いのですから、出来る人に頼ればいいのです。そして、「ありがとう」と言える子に育てればよいのです。

それから、「人に迷惑をかけてはいけません!」と言い続けると、困ったときに助けを求められない人になってしまうかもしれません。迷惑をかけたら「ごめんなさい」と言えればよいのです。

人には貢献意欲があります。誰かの役に立つことで相手には自己肯定感がつきます。

そして、本人も自分が助けてもらった経験を通して、人を助けてあげられる子になります。更に人の役に立つと本人にも自己肯定感がつきます。

人に迷惑をかけない・どこに出しても恥ずかしくない子は?

 “人に迷惑をかけない” “どこへ出しても恥ずかしくない子に育てる”ことは人間関係を良好に保っていく上で大切なことです。

けれども、このことばかりに親がこだわっていたり、他の何よりも最優先することに対して私は違和感を感じます。“人に迷惑をかけない” “どこへ出しても恥ずかしくない子”は他人軸。また親が周りから「出来た親だ、いいママだ」を評価を軸にしているように思います。

電車の中で騒ぐ子の対処法

閉鎖された空間の電車内で騒ぐ子がいたとします。これを「迷惑だ!」と感じる乗客と「子どもだからある程度は仕方がない」と思う乗客がいます。このように迷惑かどうかは、周りの判断によります。

こんなときは“周りからの評価かうんぬん”で叱ったり許したりするのではなく、誰かがいる、いないに関わらず「やっていいこと、悪いこと」を子どもの年齢や“ぐずる原因”に合ったやり方で親は教えていかなくてはなりません。

0~1歳児・不快であることを訴えているケース

泣いてぐずる子どもに対して周りの冷ややかな視線を感じて「静かにしなさい!周りに迷惑でしょ」と叱るのと、「暑いよね。しんどいよね。じっとしていなくてはならず長く感じるよね。でももうすぐ到着するから我慢していようね」と言うのと、どちらの対応をしたらいいのでしょう。

この年齢の子どもはぐずることで不快であることを懸命に訴えています。子どもの気持ちに寄り添いましょう。そして、一旦下車したり、車両を変えるなどして気分転換できるようにしましょう。

ルールをわかっていないケース

「電車は公共機関。静かにしていなくてはならない」というルールを理解しておらず、まるで公園で遊ぶ感覚で走ったり騒いだりするケースです。

こんなとき「ほら、周りに迷惑がかかるでしょ!」とか、「怖いおじさんに怒られちゃうわよ!」とか「ママ怒るよ!」ではいけません。(過去記事「ほら、怒られちゃうよ」は要注意! ついやりがちな“責任転嫁する叱り方”あるある」)

「電車はお家や公園ではないの。騒ぐ人は電車に乗る資格はないから次の駅で降りて、家に帰りましょう」と教えればよいのです。ここで「迷惑だから」と理由をつける必要はありませんね。

もし、周りのことばかり意識していたら、「誰も乗っていない車両だったら騒いでもいい」と子どもは勘違いします。