国内データ通信端末・データ通信カード市場が急激に伸びている。屋外の通信環境が整ったことでスマートフォンや携帯型ゲーム機を外出先で使う人が多くなり、とくにモバイルWi-Fiルータの購入者が増えている。また、モバイルWi-Fiルータの売りの一つである複数のモバイル端末をインターネットに接続することができる「テザリング」のニーズも高まっているようだ。利用料金を割り引くキャリアのキャンペーンも功を奏して、家電量販店もスマートフォンやタブレット端末とのセット提案に力を注いでいる。

●前年同月を上回る秋冬商戦 今年2月は1.3倍近くに

家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」で、データ通信端末・データ通信カードの販売台数をみると、昨年9月からこれまで毎月、前年同月を上回っている。販売がピークになる12月は121.4%、さらに今年2月には128.3%に達した。

これは、「モバイル端末を外出先でインターネットに接続するには、モバイルWi-Fiルータが便利」という評価が消費者に定着しつつあることを示している。これまで、無線LAN機能のないノートパソコンを屋外でインターネットに接続するには、PCのカードスロットに通信カードを差し込むか、USB接続の外部機器を利用して携帯電話網などに接続するのが一般的だった。また、無線LAN機能をもつ端末は、公衆無線LAN環境のある限られたスポットでしか使えなかった。しかし最近では、携帯電話網や通信事業者のサービスエリアが広がり、またスマートフォンやタブレット端末、携帯ゲーム機が無線LAN機能を備えるなど、モバイル端末の屋外での利用環境は整っている。

LTEをはじめとする高速データ通信サービスの充実も大きい。下り最大40Mbpsはあたりまえで、なかには70Mbpsを超えるサービスも登場している。高速データ通信なら、スマートフォンやタブレット端末でストレスなくアプリをダウンロードすることができる。外出先での快適なインターネット生活には、モバイルWi-Fiルータは欠かせなくなっているのだ。さらに、複数の無線LAN機能対応機器を同時に接続することができるテザリング機能を備えていることも、モバイルWi-Fiルータの人気につながっている。

●キャリアの割引キャンペーン 量販店にとっても旨味

もちろん、通信事業者による利用料金割引キャンペーンも、利用者増を後押ししている。ソフトバンクモバイルは、ZTE製のモバイルWi-Fiルータ「SoftBank 007Z」を発売した2011年7月8日から、下り最大42Mbpsの高速データ通信サービス「ULTRA SPEED」に対応する料金プランとして、月額が定額4980円の「データし放題フラット for ULTRA SPEED」、1400~5460円の2段階定額制で利用できる「データし放題 for ULTRA SPEED」を提供している。今年2月には、下り最大110Mbpsの高速データ通信サービス「SoftBank 4G」の開始に合わせて、月額5985円の「4Gデータし放題フラット」を4月30日までのキャンペーン期間中に申し込むと、通常より1005円安い4980円に割り引く「4Gデータ通信スタートキャンペーン」を実施。また、iPhoneやXシリーズ以外の同社スマートフォンのユーザーが「SoftBank 4G」を契約すると、「4Gデータし放題フラット」の月額料金を3880円に値引く「スマホセット割」を提供している。

イー・アクセスは、「高速モバイルキャンペーン(にねんM)」を昨年9月から今年5月6日まで実施している。下り最大42Mbpsに対応した「EMOBILE G4 データプラン」で、通常5980円の月額料金が3880円になるキャンペーンだ。ほかにも、下り最大75MbpsのLTEサービス「EMOBILE LTE」を3月15日に開始し、あわせて「EMOBILE LTEスタートキャンペーン」を5月31日まで実施。「LTEフラット にねん+アシスト1600」で契約し、毎月一定の金額を割り引く「月額割」を適用すると、オンラインストアで端末を実質負担0円で購入し、月額3880円で利用できる。NTTドコモも、次世代通信サービス「Xi」対応スマートフォンとモバイルWi-Fiルータをセットで利用すると月額料金を割り引くキャンペーンを3月31日まで行っている。

家電量販店にとって、これらのサービスの販売は、回線契約と機器販売につながる旨味のあるビジネスだ。キャリアのキャンペーンを最大限に生かして、スマートフォンやタブレット端末の販売時にモバイルWi-Fiルータを提案し、拡販に取り組んでいる。

速く、安く、どこでも使えるようになったデータ通信。利用者は確実に増加する。モバイルWi-Fiルータは、その利用に欠かせない機器として、これからも売れ続けるだろう。

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコンやデジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2012年3月19日付 vol.1424より転載したものです。 >> 週刊BCNとは