TBS系とテレ朝系で現代劇がバッテイングする木曜9時。今期は『最高の人生の終わり方』と『聖なる怪物たち』の戦いだった。どちらもキャストは豪華で、TBS系の『最高の人生の終わり方』は、山下智久、榮倉奈々、前田敦子、知念侑李、反町隆史、山崎努、大友康平など。テレ朝系の『聖なる怪物たち』は、岡田将生、中谷美紀、加藤あい、長谷川博己、鈴木杏、小日向文世、大政絢など、という布陣だった。さて、その結果は……。

『聖なる怪物たち』の平均視聴率(ビデオリサーチ調べ・関東地区)は、加重平均で7.77%(単純平均で7.66%)。一方の『最高の人生の終わり方』は、11.05%(同10.89%)。視聴率では、『最高~』が3ポイント以上の差をつけて『聖なる~』に勝利を収めた。ただ、『最高~』も何とか2ケタに乗せた程度の数字だったし、視聴率的には残念ながらどちらも勝ち組とはいかない結果だった。

じゃあ、内容的にはどうだったのかというと、まずは原作があった『聖なる怪物たち』。こちらは、結末を原作とは違う春日井(中谷美紀)の意図的な犯行にしたのは悪くなかった。妹である圭子(加藤あい)に、そうまでした思いが伝わらなかったところは、それなりに哀しさが出たと思う。健吾(岡田将生)のキャラクターも正義感の強さ、真っ直ぐさを強調したものになっていたけど、そこも分かりやすさを考えれば良かったと思う。

ただ、終盤はかなりバタバタで、健吾の先輩・水原(勝村政信)や、入院患者の糸川(渡辺いっけい)の描き方はかなり雑だった。まあ、それを言い始めると、瑤子(大政絢)や瑤子の兄・邦夫(長谷川朝晴)の描き方もどうなんだって話になるけど……。

聖なる怪物たち DVD-BOX』 
※7月13日発売予定  

そもそもこの作品は、医療関係者や教育者などを聖職者とする前提にやや無理があったような気がする。悪い医者の話なんか、ドラマでもいっぱいあるわけだし、今時、医者や看護師や教育者を無条件に聖職者だと思っている人も少ないと思う。だからこれをやるには、具体的な登場人物を、本当に聖職者のようなキャラクターとして最初に描く必要があった。でも、連ドラでそれをやっていると、なかなか話が進まないので、どうしてもすぐに事件を起こさざるを得なくなる。つまり、企画自体が連ドラに向かなかったんじゃないだろうか。

初回の視聴率はかろうじて10%を超えていたけど、2話以降はずっと1ケタだったというのも何となく納得できる推移だった。中谷美紀、加藤あい、長谷川博己あたりの絡みは期待していただけに、もったいなかったと思う。

関係ないけど、渡辺いっけいの今期の連ドラ出演はすごかった。この『聖なる怪物たち』に加え、『ストロベリーナイト』と『ステップファザー・ステップ』にもレギュラー出演していた。もしかしたら、渡辺いっけいが一番の怪物だったのかもね。


そして、葬儀屋さんが舞台だった『最高の人生の終わり方』。こちらは、とにかく欲張り過ぎだった。最初からミステリー要素もあるヒューマン&ラブコメディというジャンル不明の作品だったけど、いろんな要素を詰め込み過ぎて、かなりとっちらかった印象になってしまった。長男・健人(反町隆史)の病気、長女・晴香(前田敦子)の障害、次女・桃子(大野いと)の不倫&教師との禁断の恋、腹違いの兄弟、刑事殺し、幽霊のレギュラー出演などなど、そこまで広げなくても……、という感じだった。

ただ、行き当たりばったりの脚本ではなかったと思う。事前の仕込みや、その後の展開も考えたエピソードも多かった。そして何より、ひとつひとつの人間ドラマは、葬儀屋さんを舞台にしてあっただけに、沁みるものがあった。だからこそ、怖がらずに削るところは削った方がよかったのに、と思う内容だった。

最後に健人が記憶を失くしていく話と、記憶が欠けていた岩田(山崎努)の死因を真人(山下智久)と優樹(榮倉奈々)が補完していく話を重ねて描いていたけど、あれをやるなら、家族内の話は健人メインでよかったと思う。隼人(知念侑李)や桃子のエピソードも健人絡みで作ればよかったわけだし……。とにかく、いろんな人生を描きたかったのは分かるけど、家族内でふくらませ過ぎたのが、ちょっと残念だった。

あと、タイトルがね。そのままズバリのタイトルで分かりやすかったけど、もう少し工夫してもよかったような気がする。少なくとも、当初の狙いとしては、単なるヒューマンドラマではないものを作ろうとしてたわけだから。

山下智久と榮倉奈々のコンビは、クールで良かったと思う。もし、ミステリーとヒューマン&ラブコメディを本気でやるなら、いっそのこと真人の家族の話は最小限に抑えて、2人メインでやってもよかったのに、と思ったりもした。まあ、これだけ家族が増えたのは大人の事情もあったのかもしれないから、望んでも無理だったのかもしれないけど。

榮倉奈々はやっぱり前期の『蜜の味』で一皮むけたというか、いい意味で力が抜けた感じがするので、次回作に期待したい。 

たなか・まこと  フリーライター。ドラマ好き。某情報誌で、約10年間ドラマのコラムを連載していた。ドラマに関しては、『あぶない刑事20年SCRAPBOOK(日本テレビ)』『筒井康隆の仕事大研究(洋泉社)』などでも執筆している。一番好きなドラマは、山田太一の『男たちの旅路』。