(左から)黒木華、山田洋次監督、吉永小百合、浅野忠信

 映画『母と暮せば』のクランクアップ記者会見が12日、都内で行われ、出演者の吉永小百合、二宮和也、黒木華、浅野忠信、監督の山田洋次氏が出席した。

 この作品は、作家・井上ひさし氏が代表作である「父と暮せば」と対になる映画を作りたかった、という故人の思いに感銘を受けた山田監督が、長崎を舞台に描く母と息子、そして周囲の人々の物語。

 1948年、助産婦をして暮らす伸子(吉永)の前に、3年前に原爆で亡くしたはずの息子・浩二(二宮)が現れる。「ぼくはもう死んでいる」と言う浩二は、それ以来ときどき伸子の前に現れるようになり、2人は奇妙だが楽しい時間を過ごす…。山田監督初のファンタジー作品だ。

 山田監督は「被爆した長崎医科大学のことが以前から頭にあったからだと思いますが、舞台が長崎と聞いて、息子が原爆によって亡くなり、亡霊として現れて母と対話する、というストーリーが即座に頭に浮かびました。それこそが僕の作りたい映画だと思った。たまたま終戦70年にも重なり、僕のいちばん大事な映画になるのでは、と思っています」と製作のいきさつを吐露。

 二宮は、山田作品に初参加。「史実に基づいたこういう作品で、改めて長崎の原爆ということを勉強する機会をいただき、それを体現することができました。自分がこの問題をどう思うとか、どう考える、というものは僕の中にはありますが、役を通して映画においてきたつもりです。何度も何度も見ていただいて、それを感じていただければと思います」とあいさつした。

 撮影を振り返り、これまで多くの山田作品に出演している吉永は「今回が一番監督の情熱を感じました。私がそれに応えられず落ち込んだことがずいぶんありましたが、そんなとき、息子が、二宮さんが軽やかな演技をされていて…。それに助けられました」とコメント。

 二宮は恐縮した表情を見せながら、「現場に入ってみると、独特の空気を感じまして。監督に紙とペンを渡されて『じゃあはい、自分の名前を書いてごらん』と言われているような不思議な感覚に陥りました。まだ32年間ですが、その中のいろんな経験が邪魔をして、どう書けばいいのか自分で混乱するような…。これではだめだと思い、書きなぐるように全力で初日の現場には立たせてもらいました」と撮影時のエピソードを語った。

 また、お互いをファーストネームで呼び合うなど仲の良い母子の姿が話題になった吉永と二宮だが、二宮は「僕は『かずなりさん』と呼んでいただいていたんですが、ちょっとドキドキしちゃいます。親にも1回も呼ばれたことがなかったので、僕の初めての人になりました」とにこり。

 「初めての方には名前を『かずや』と呼ばれることも多くて、半ば諦めていた部分もあったんですが、そういうときにも『かずなりさん』と呼んでいただいて、『かずやじゃないよ』と宣伝活動をしてくださって。母親のように『この子の名前を知って』というような接し方をしてくださった」と二宮が言うと、吉永も「どうお呼びしようと思っていたらスッと『小百合さん』と言ってくださって。距離がうんと縮まった思いがしました」とコメント。「撮影が終わった後もテレビで危ないことをしていたりすると、うちの息子は大丈夫かしら、とドキドキしました」と語るなど、ほほえましいエピソードを披露した。

 映画『母と暮せば』は12月12日全国公開。