【日本中がスギちゃんに気付いた「ワイルド記念日」だぜぇ!】

今年で10回目を迎えた『R-1ぐらんぷり2012』が終わった。なんともハッピーでワイルドな、すてきなすてきな大会だったと思う。そしてまずはなにより、COWCOW多田の優勝を言祝ぎたい。優勝、本当におめでとうございます!
※なお「決勝目前インタビュー」でのCOWCOW多田のインタビューはコチラ。そして実はその場に同席する形で行った、相方のCOWCOWよしのインタビューはコチラ。どちらも必読。

3回戦のスギちゃん

その上で! 今回は、日本中の視聴者の心に残った芸人のことを取り上げたいと思う。そう、スギちゃんである。優勝の瞬間、多田の涙を見て、「もらい泣きしちゃって…」と、多田以上に泣いていたスギちゃんの、準優勝を言祝ぎたいと思う。どこまでもワンダフルでワイルドだったぜぇ、スギちゃん!と。みんながスギちゃんに気付いたんだよ、おめでとう!と。

ちなみに多田は、決勝終了後の会見で、決戦投票になった際の心境をこう答えた。
「なんだか申し訳ないなと。ピン芸人の大会であることを思えば、スギちゃんに入ってほしいとすら思いました。その後、僕に票が入って優勝でき、ありがたかったんですけど、やっぱり申し訳ないなという思いはありました」。

あのとき、番組を見ていた人みんなが、スギちゃんのことを「いとおしい」と感じていた。なぜだろう? それはスギちゃんのネタが面白かったのはもちろんあるけれど、なにより彼の“人間力”が、たっぷりとあの番組に出ていたからだと思う。

スギちゃんはバカであり、いい人だ。

スギちゃんの“いい人具合”については、COWCOW多田からの「もらい泣き」で充分に知れるけれども、さらに付け足したい。以下は「直前インタビュー」からの抜粋である。※なお完全版はコチラ

――決勝進出が決まったときの心境は?
スギちゃん:うれしかったぜぇ。思わずちょっと泣いちゃったぜぇ。
――ワイルドスギちゃんでも、さすがに。
スギちゃん:というのも、事務所でマネージャーと一緒にいて知らせを聞いたんだけど、マネージャーが涙ぐんでるのを見て、思わずもらい泣きしちゃったぜぇ。でもよく考えると、スギちゃんが今の事務所に来てまだ一年くらいだから、本当はそんなに思い出はないはずだぜぇ。なんで泣いたのかよくわからないぜぇ。でもつられちゃったぜぇ。
――ご両親には?
スギちゃん:もちろん報告したぜぇ。そしたらお母さんとしゃべってて、なんだか芸人になって18年間のことを思い出したぜぇ。それでスギちゃん自身は苦労した意識がないんだけど、18年って長かったなあと思ったら、お母さんは大変だったろうなと思って…スギちゃん、また泣いちゃったぜぇ(笑)。泣きまくってるぜぇ。

とにかく、スギちゃんは泣く。ワイルドなのに泣く。いや、ワイルドを知る男だからこそ、泣くのである。「泣きまくってるぜぇ」という言葉を、私はこれまで聞いたことがない。しかも、スギちゃんはそう言って、「ワハハハハ!」と笑うのだ。もうねえ、これだけでなんというか、ラブ・スギちゃん。

そして、スギちゃんがバカである、ということについて(もちろんいい意味で)。
スギちゃんは決勝の会見で、同じく決勝に勝ち進んだヤナギブソンからこんなことを言われたのだった。「嫁がYouTubeでスギちゃんのネタを見て、爆笑していたのでスギちゃんには負けたくない」。それを受けたスギちゃんは、その後こう答えている。

スギちゃん:予選で2本交互にやってきたんだけど、それをやろうと思ってるぜぇ。でも、それが丸々YouTubeに上がってしまってるから、ほんと削除してほしいぜぇ。あれはもう、全部バレちゃうぜぇ。みんなに見られてしまったら…困っちゃうぜぇ。どうかひとつ、削除をお願いするぜぇ。削除できなくても、見ないでほしいぜぇ。というか、見たとしても「あ、また同じのやってる」とか思わないでほしいぜぇ。

で、スギちゃんが削除してほしかった動画がコレ。

なんと、本当にほぼ同じなのだった。顕著な変化といえば、持って現れたのが焼酎からコーラになったくらい。ワイルドすぎるにもほどがあるぜぇ。
※3/23、とうとう動画が削除された。スギちゃんの願いが、R-1のオンエア後にようやく届けられたという…。そのあたりもスギちゃんらしいというか、アバウトなワイルドだぜぇ。

決勝会見当日に2本目のネタがなかった芸人たちが、もう一本のネタを作り出した15日間、スギちゃんは一体なにをしていたのだろう? いや、スギちゃんのネタは、何度見ても面白いから、全然気にならないのだが、それにしても。スギちゃんのワイルドなワールドはこれだけではない。

さらに、優勝賞金500万円の使い道を訊かれたスギちゃんの答え。

――もし優勝した場合、500万円どうしますか?
スギちゃん:実家の両親に全額送ってあげるぜぇ。
――おお!
スギちゃん:それですぐ送り返してもらうぜぇ。そしたらすぐ貯金するぜぇ。
――それネタじゃないですか(笑)。いいんですか、自分でバラしちゃって。
スギちゃん:なんだか加減がわからないぜぇ(笑)。

い、いとおしい!! その上、スギちゃんはプライベートなことも、なぜかいきなりしゃべり出すのでもある。

スギちゃん:優勝したら、この前、後輩の元カノに告白して振られたんだけど、もう一回告白するぜぇ。
――そこでさらにフラレたらどうするんですか?
スギちゃん:そのときは…あきらめるぜぇ。でもあれだぜぇ。昨年の10月に同棲していた彼女が出て行ったんだけど、それからいろいろいい方に転がってる感じがあるぜぇ。
――そうなんですか!?
スギちゃん:一緒に住んでたときは、全然掃除しないからイライラしてたんだけど、そのイライラがなくなったおかげで、お笑いに専念できてる感じがあるぜぇ。

ワイルドなスギちゃんは、とにかくあけっぴろげなのだ。しかしその辺は間違いなくワイルドであるけれども、彼女が掃除しないことにはイライラするという。いとおしすぎやしないか。

決勝戦で、同じく今日でもってスギちゃんに気付いた竹内結子は言った。
「私は、しばらくスギちゃんから目が離せなくなると思います!」

そして決勝直後のツイッターでは、みんなが「~だぜぇ」とつぶやいた。おそらくは、これからまずは子供たちの間で「だぜぇ」は流行し、それから居酒屋でも「~だぜぇ」が飛び交うようになり、結婚式の余興で「ワイルドな○○ちゃんだぜぇ」とやる人が出てくるはずである。それをもって、スギちゃんを一発屋と懸念する向きもあるかもしれないが、断言しよう。スギちゃんは大丈夫。なにしろ、芸歴18年だ。そのあたりHi-Hiを思わせもするけれど、スギちゃんもとにかく“人間力”がある。その上、ワイルドな人間力だ。バラエティにどれだけ出ても、ワイルドなスギちゃんの魅力は増えこそすれ、枯渇しないはずだ。だからもう、みんなでワイルドになったら、それはとても楽しいことなんじゃないかと、私なんかは思うんだぜぇ。

『日本中が「スギちゃんいいね」と言ったから
    3月20日は“ワイルド記念日” だぜぇ(←字余り)』

 たかはし・ひろゆき ライター。書店に勤めたり、雑誌の編集者を務めた後、フリーランスのライターに。なんにでも興味を持ってしまうため、お笑い、映画、本、音楽、街ネタ…などなどジャンルは限らず。世にあるものすべてがおもしろい。はず。