松永:忘れられないように、今後も頻繁に出していこうと思います!
それで、今回のツアーで会場限定CDを作ったのも「原爆の恋」という曲がメジャーでは出せないだろうということで「地下出版」って形にしました。

物事をまっすぐにしか受け取れない、アイロニーを解さない人が多くなってきている。アイロニーでやることが通じなくなってる昨今だからこそ、ある程度情報をクロージングしたほうがいいというのはあるんですよ。地下出版物を手に入れるためにはハードルがありますから、お金を払うのが何より嫌いな火事場の見物客は一掃できる。文脈を紐解くために、リテラシーも必要とされるんです。

――全部閉じてしまうのは良くないけど、自分たちの領域を守ることは必要になってくるのでは。でもだからこそ、『鬱フェス』であえて炎上しそうなワード『鬱』って全面に出すのはいいと思うんですよね。アーバンギャルドの核に当たる言葉だと思いますし。

松永:アーバンギャルドを本格的にやり始めて8年経ちました。その一方でアーバンのキーワードでもある「メンヘラ」という言葉も世の中に浸透してきて、昨年のYahoo!検索ランキングで「メンヘラ」が1位だったらしいんですよ。

(※2014年12月の「Yahoo!検索ワードランキング 2014の意味検索部門の1位が「メンヘラ 意味」だった)

――「メンヘラ」という言葉自体がカジュアル化したというか「世の中になじめていない人」くらいでもそう呼んでしまう風潮があるわけじゃないですか。

松永:そうそう。たとえばオタクにしても、宮崎勤の事件があったりして昔はすごく差別されていたけど、いまやどんどんライトになり一般に浸透し、映画にしてもアニメにしても日本産のコンテンツでオタク要素のないものってむしろ少ないじゃないですか。その潮流は結果的に多くのオタクをアイデンティファイさせ、救ったと思う。

「オタク=黒人説」なんてのも囁かれてますが、ブラックミュージックはいまや完全に世界を席巻しましたよね。すべてのマジョリティ文化は辺境から、マイノリティから生まれる。

『アフロ・ディズニー エイゼンシュテインから「オタク=黒人」まで』 90年代に差別されていたオタクたちの文化が市民権を得ていく過程で拡散していった現象を、ブラックミュージックになぞらえるという考え方もある

だからメンヘラという概念もある種の誤解や誤読を孕みつつも、ライトになっていくこと自体は肯定してもいいんじゃないでしょうか。

「私アニメとか好きだからオタクです!」みたいな子も最近は普通じゃないですか。むしろ没個性。あれと似た感じになってくるんじゃないですかね。「リアルメンヘラ」を自称する人は彼女たちを「偽物」と断罪し、煙たがるでしょうけど……。

――良い悪いはともかくとして「メンヘラアート」みたいな表現も生まれていますし。

松永:それに関して思うのは、ただの心象吐露、「ダダ漏れ」になってしまってはいけないということですね。

僕らは作品を作っているわけで、編集や意図が入ってないと、ただの掃き溜めになってしまう。そこはちゃんと、フィクションに、創作物にしないと。

もちろん掃き溜めみたいな事実の羅列が支持される世界もあると思いますが、アーバンギャルドとしてはメンヘラにある種の客観性を持ち込んだのが新しかったんじゃないかなと手前味噌ながら思っています。当事者的には事実と異なる表現もあるかもしれませんが、それは第三者の視点が入り込んだ創作物だから。

よりきれいな嘘、よくできた手品みたいな嘘がつきたいですね。

嘘ばかりついていますが、嘘をあつめて嘘をあつめて真実に変えたい。何処かで自殺した女の子だって生き返らせたいし、あり得ない夢だって見せてあげたい。

いちいちやれファッションメンヘラだと断罪する人に対しては、ファッションメンヘラとリアルメンヘラの境目とは何かな?手首を切っているか否かかい?と問いたい。病みや鬱は、もっと複雑怪奇にしてケースバイケースですよ。手首は傷ついてなくても、心が傷だらけの人だっていますよ。そういう人ほど受け身が出来なくて、ある日突然命を絶ってしまう。

「メンヘラ」が一般的になり拡散と浸透を繰り返していく上で誤解を受けることは多々あるだろうけれど、それに対して条件反射のように怒ったり「リアルメンヘラ」だけを持ち上げるのは創造的ではない。

人類が抱える心の闇に興味があるからといって、あなた自身が病む必要はないんです。でも一方で僕は、現代人は誰しも心の闇を抱えてるものだと考えて表現をしています。明日自分が自分を殺めない保証なんて何処にもない。その意味で言えば、あなたは既に病気。誰もがみんな病気です。

 

アーバンギャルド Presents 鬱フェス2015

◯日程: 2015年9月4日(金)、5日(土)
◯会場:TSUTAYA O-EAST(東京 渋谷)
◯OPEN/START: 4日:17:30/18:30  5日:13:00/14:00

◯4日
アーバンギャルド、大槻ケンヂ(筋肉少女帯/特撮)、神聖かまってちゃん、モーモールルギャバン、ムシケラトプス、ベッド・イン、原田茶飯事

◯5日
アーバンギャルド、人間椅子、NoGoD、PASSPO☆、新垣隆&吉田隆一、南波志帆 、ザ・キャプテンズ 、DAOKO、レ・ロマネスク、町あかり、サカモト教授、テンテンコ

更なる企画も…??

【チケット料金】
◯1日券:¥5,500(Drink代別)
◯2日間通し券:¥10,000円(各日Drink代別)
※通し券をお持ちの方から「優先入場」となります
※各日再入場可能

【チケットぴあ】
<電話受付> 0570-02-9999(Pコード:通し券 781-743/1日券 269-204)

アーバンギャルドの戦後七〇年、戦前×年ツアー(仮)

◯日程・会場・開場/開演時間
2015年10月31日(土)広島CAVE-BE 17:30/18:00
2015年11月1日(日)福岡DRUM SON 17:30/18:00
2015年11月7日(土)OSAKA RUIDO 17:30/18:00  残りわずか!
2015年11月8日(日)名古屋ell.FITS ALL 17:30/18:00  残りわずか!
2015年11月14日(土)札幌Sound Lab mole 17:30/18:00
2015年11月21日(土)仙台HooK 17:30/18:00
2015年11月29日(日)代官山UNIT 17:15/18:00  残りわずか!

【チケット料金】
◯¥3,800(Drink代別)