【漫画】アルセーヌ=ルパンの活躍を描く『アバンチュリエ』

2012.3.23 6:00

アルセーヌ=ルパンを主人公にした漫画 『アバンチュリエ』。ルパンの大ファンであるという作者、森田崇氏ならではの演出が光る「新訳 アルセーヌ=ルパン」の魅力に迫ります!

タイトルのアバンチュリエ(Aventurier)は、作者の森田崇氏によれば、「冒険家」の意味などの他に、「山師」「ペテン師」「あえて危険を冒す者」「手段を選ばず富や権力を追い求める者」などの意味もあるんだとか。なるほどアルセーヌ=ルパンが自己紹介に使いそうな単語です。そのアルセーヌ=ルパンを主人公にした漫画が講談社の「イブニング」で連載中の 『アバンチュリエ』(森田崇)です。

原作の小説はフランスの作家、モーリス=ルブランの手によるものですが、ポプラ社作品が小学校や町中の図書館に置かれていることがあるので、読んだ人も多いのではないかと思います。まさに怪盗紳士と呼ぶにふさわしい活躍なのですが、ポプラ社版ルパンは、一部では“怪訳”とも呼ばれる内容になっています。他社から発売されている文庫版などを読むと、ルパンはどちらかと言えば愉快犯だったり、快楽主義者だったりするようなところがあるんですよね。またストーリーにも、ダーティな雰囲気がプンプン漂っています。そのまま子供向けに翻訳するのを避けたのは、懸命な判断だったのでしょう。そんなポプラ社ルパンに心を躍らせた人もいるはずです。アルセーヌ=ルパンは本国フランス以外では、日本で人気があるのですが、ポプラ社ルパンが原因の一つであるのは間違いありません。

さて漫画 『アバンチュリエ』ですが、ほぼルブランの原作小説に沿った形で展開されています。いきなりストーリー開始早々に、変装を見破られたルパンがガニマール警部に逮捕されるところなど、山場も山場なのですが、何度読んでもインパクトは変わりません。また随所に森田崇氏の演出が加えられているのですけれども、ルパンの大ファンである森田崇氏が練りこんだ成果なのでしょう。どれも楽しく読むことができます。

そんな中で若干、違和感を覚えたのが、主人公であるアルセーヌ=ルパンの性格と言うか、キャラ付けです。物語が始まった頃、ルパンは20代だと思うのですが、青年どころか少年や子供(ガキ)じゃないのかと思わせる言動が目立ちます。それでは原作小説で、ルパンがそう言うことをしなかったのかと言えば、そうでもないんですよね。絵(漫画)になったことで、少年っぽい面が強調されてしまったのかもしれません。これも漫画なりの演出と思えば、楽しみの一つになると思います。漫画が進んでルパンが成長すれば、もっと大人なルパンも出てくるのでしょうか。

また漫画になって、大いに嬉しいのが、ルパンの乳母であるビクトワールの扱いです。ルパンの乳母なのですから、普通に考えれば中年女性、最低でも20歳くらいは離れているはずなのですが、漫画内ではうら若き女性として、そして陰からルパンを見守り支える役目として描かれています。推定年齢30代前半、下手すれば20代ってこともありそうです。作者は、漫画化するにあたってあえて若くキャラクター設定をしたと明かしていますが、あの若さでルパンのことを「坊ちゃん」と呼んでるのは、どうなんだろうってところです。ルパン本人も苦笑いするしかないのではと思ってしまいます。ただ若い女性が活躍するのは悪いことではありません。掲載誌も青年向けですから、ファンを呼び込む一助になるでしょう。原作小説でもルパンは何度も結婚していますし、女性が鍵となって活躍する話もたくさんあります。むしろ女性がいるからこそ、ルパンは人一倍活躍するのではないかと思います。

そして作者によれば、以下の通りです(作者ブログ「フラットランド」より引用)。

あと、ルパンの部下や警察関係者は 原作以上にそれぞれどんどん立てていけたらなと思います。
(中略)
「蒼天航路」における曹操の家臣団、 「銀河英雄伝説」におけるラインハルトの元帥府やヤン・ファミリーのように、 「ルパン一味」の、ひとりひとりのキャラを立てていければなと思っております。

すると脇役の活躍なども期待したいのですが、さすがに原作小説では、あまり取り上げられていません。『蒼天航路』(原案:李學仁、漫画王:欣太)や『銀河英雄伝説』(田中芳樹)では、脇役が単独もしくは複数で活躍する話をいくつも読むことができます。それでは『アバンチュリエ』でも、森田崇氏の手による、外伝などを期待したいのですが、どうなんでしょうね。掲載誌が講談社の「イブニング」ですので、「モーニング2」や「アフタヌーン」くらいなら可能性はあるかなと勝手に思っているのですが。

3月23日に『アバンチュリエ』のコミックス3巻が発売。そして「イブニング」の連載では、ライバルとなる名探偵のハーロック=ショームズが再び登場しています。ハーロック=ショームズが、コナン=ドイルの名作探偵小説の主人公、シャーロック=ホームズであるのは、言うまでもないところ。作の出版時には、名前をちょっと変えざるを得ない事情があり、そうしているのを踏襲しています。二人の天才対決がどうなるのか。これまでと同じように概ね原作に添った形で展開するとは思いますが、そこに加わる森田テイストでの盛り上がりを楽しんでください。

あがた・せい 約10年の証券会社勤務を経て、フリーライターへ転身。金融・投資関連からエンタメ・サブカルチャーと様々に活動している。漫画は少年誌、青年誌を中心に幅広く読む中で、4コマ誌に大きく興味あり。大作や名作のみならず、機会があれば迷作・珍作も紹介していきたい。

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