デジタル化で「特撮」はどう変わったか?

しかし、それでも満足しなかった円谷は、当時、約4000万円もしたというフォーヘッド方式オプチカル・プリンターの購入を画策。特撮番組を制作するという契約のもと、TBSが購入しました。そして『ウルトラQ』『ウルトラマン』などのシリーズが登場したのです。

フィルムを同期させるため、細やかな装置だ  ※写真提供 光学太郎、日本エフェクトセンター

オプチカル・プリンターは各社にも普及し、多くの特撮映画、特撮番組が作られました。現在も人気の『仮面ライダー』シリーズや『戦隊』シリーズ(ともにテレビ朝日系)、NHKの少年ドラマシリーズなどの子ども向けのもの、『日本沈没』や『東宝8.15』シリーズといったSF、大作、時代劇などでも、合成技術は重宝されていきます。

しかし、1990年代に入ると徐々にCG(コンピューター・グラフィックス)による合成が可能になり、フィルムで映画を撮る時代も終焉を迎え、オプチカル・プリンターを使った合成は行われなくなっていきます。

また、その一方でCGの技術の発達は、ミニチュアや着ぐるみによる特撮も過去のものにしようとしています。壊れていくセットや爆破シーン、怪獣そのものなども、CGで製作でき、細やかな動きを造れてしまうのです。

そして、『ヤッターマン』や『ガッチャマン』など、実写化不可能といわれていたアニメなどが次々実写化されました。たとえば、現在放送中の『ど根性ガエル』などを見れば、その技術躍進には目を見張るものがありますよね。

今回、話題を集めている『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN END OF THE WORLD』では、着ぐるみではなく巨人に扮した俳優という形ではありますが、日本が培ってきた怪獣映画へのオマージュが捧げられているようにみえます。CGだけでは作れないダイナミズムが、そこにはあると思えるのです。

『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』©2015 映画「進撃の巨人」製作委員会 ©諫山創/講談社

一方、一般家庭においても、「Adobe After Effects」の普及により、パソコンで簡単に合成が出来るようになってきました。これにより、自主製作による低予算作品でも、商業作品と遜色のない特撮作品を制作するツワモノも増えてきたように思えます。

これらの作品の中から、次の日本の特撮界を背負う才能が現れるのではないでしょうか?

「ぴあ中部版」映画担当を経て上京、その後はテレビ情報誌、不動産雑誌・広告などの編集・ライターを務める。著書に『年収350万円でも家が買える』(2014年・彩図社刊)。また、映画監督としては、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭などで注目され、2002年「異形ノ恋」(出演・西川方啓、木下ほうか、寺田農)でデビュー。