会見より。左から、シルビア・グラブ、井上芳雄、和音美桜、福井貴一 会見より。左から、シルビア・グラブ、井上芳雄、和音美桜、福井貴一

「ウエスト・サイド・ストーリー」の作詞や「Into the Woods」で知られるミュージカル界の巨匠スティーブン・ソンドハイムが手がけ、トニー賞4部門を受賞した傑作『パッション』の製作発表会見が9月2日に新国立劇場にて開催された。日本初演となる今回、出演の井上芳雄をはじめ、和音美桜、シルビア・グラブ、福井貴一、音楽監督の島健、演出の宮田慶子が出席し、意気込みと手応えを語った。

ミュージカル『パッション』チケット情報

イタリア映画「パッション・ダモーレ」を元にした本作。19世紀のイタリアを舞台に兵士ジョルジオと美しい恋人クララ、ジョルジオに恋い焦がれる病弱な女性フォスカの3人のめくるめく重厚な愛の物語が展開する。

オリジナルの映画版を鑑賞したという宮田は、ヒロインなのに美しくないフォスカ像や女の執念を描いた恐ろしい物語に「衝撃的でした」と感想を漏らす。ミュージカル版の楽曲についても「ソンドハイムならではの難しさがある」と語るが、それでも「時折、身も心もとろける美しいメロディがあり、そこにハマりました。とにかくテーマは愛! 恋愛をしないと言われる若者たちにぜひ見てほしい」と熱く語った。

ソンドハイム作品初挑戦となる島は「誰でも口ずさめるメロディはほとんどない」とその難しさに言及するが「一見、怖いけれどロマンチックな物語を見事に表している」と難解さの奥にある魅力を語る。

井上は「ミュージカル俳優を志して上京して、大学時代はこの新国立劇場でチケットもぎりのバイトをしてました」と明かし、ミュージカルに主演という形で“凱旋”を果たすことに「故郷に錦を飾る気持ちです」と感慨深げ。ジョルジオは、ふたりの女性に言い寄られる魅力的な男ということで「色香」を自らのテーマに掲げ「オープニングからセクシーです」と笑みを浮かべていた。

キャスト陣からもソンドハイムの楽曲の難解さに対するコメントが続出する。井上は「何回聴いても入ってこない!」と嘆き節。3作目のソンドハイム作品出演となるシルビアも「『Into the Woods』の時は毎晩、うなされましたし、今回もすでにうなされてます」と苦笑するが「愛し、愛されることは複雑で大変だけど、素晴らしいことだと伝えたい」と語り、和音も「難しい楽曲に立ち向かい、歌いこなすことで表現できることがきっとある」と闘志を燃やす。

前日には初めての本読みが行われており、その内容に「感動した」と語る福井は「やる方は難しいですが、聴く方は素晴らしいですよ。感じてもらえるミュージカルになると思います」とこの先、1か月半の稽古を経ての完成作に自信をのぞかせた。

ミュージカル『パッション』は東京・新国立劇場 中劇場にて10月16日(金)より開幕。前売りは一部を除き完売しているが、9月6日(日)午前10時より追加公演のチケットを発売。

取材・文・撮影:黒豆直樹