バーでのトークは、まるで自然発生的なセッション

そして、実際のバーでのやり取りも番組の冒頭の言葉「FAKE? REAL?」が表わすように、虚実入り混じった会話が繰り広げられてきました。

雑誌『SWITCH』2015年5月号に掲載された、エッセイスト/イラストレーターで「ホワイトレインボー」の常連さんとしても出演している能町みね子さんのコラムによれば、『ヨルタモリ』の台本は「会話例」があるだけで、実際はその会話例通りに収録が進んだことは一度もないのだとか。

確かに見ていても誰もセリフっぽいことは言ってなくて、しかも回が進むにしたがって、会話だけでなく雰囲気も自然な感じが自然に作られているという気がします。

最近の『ヨルタモリ』では、急にセッションが始まることがありますが、話にもちょっとしたきっかけに誰かが乗っかり、さらに発展し…というプロのセッションのようなものを感じます。

この番組でのタモリさんは「タモリ」ではなく、岩手の一関でジャズ喫茶を経営する「吉原さん」だったり、建築家の「近藤さん」だったり、ヨット関係の仕事をしている「高瀬川さん」だったり、今のところ番組開始当初だけの登場ですが、大阪の工務店の社長の「阪口さん」だったりと、唯一、別人格として登場します。

でも、その話の中には本当にタモリさんが思っていることや、時にはその時に扮しているキャラクターの実際の話も含まれていたりして、それを見分けるのも楽しみのひとつです。

糸井重里さんがゲストの回では、「吉原さん」に扮していたタモリさんが「32年間、他人の話を聞き続けてきたんだから、今度は俺の話を聞いてよ!」と漏らす場面も。

「お酒以外は全部ウソ」という、その虚実ないまぜなところがこの番組の魅力のひとつですが、タモリさんがキャラに扮しながら話していることが芸能ニュースに取り上げられ、「タモリが持論を展開」という記事を見た時には、奇しくも吉原さんがよく言う、「ジャズな人」と「ジャズじゃない人」の違いを知ることとなりました。

ちなみに「ジャズな人」と「ジャズじゃない人」については、今も毎週、番組の中でチラッと説明されています。

オープニングのタモリさんが紹介される数秒の英文ですが、これを言ってしまうとジャズじゃない人になっちゃいそうなので、ご興味のある方は一時停止ボタンを押しながら読んでみて下さい。