毎年IFAが開催されるドイツ・ベルリンの展示会場メッセ・ベルリン

ドイツの首都・ベルリンで9月4日から9月9日まで開催するエレクトロニクス展「IFA2015」では、今年の後半から来年にかけてエレクトロニクスのトレンドをリードするであろう製品やサービスが数多く発表された。本記事では映像の4K、オーディオのハイレゾに関連するIFA2015のハイライトを振り返ってみたい。

●欧州市場にも着実に浸透する4K HDRも次のトレンドに

「コンテンツがないのに、4Kテレビなんていらない」。日本でもつい最近まで4Kテレビの必要性に対して、こう懐疑的になっていた人々も、いまではちょっと贅沢な暮らしをかなえてくれる4Kテレビが欲しいと思っているのではないだろうか。

もちろん生産がこなれて値段が落ち着いてきたからという理由が背景にはあるのだが、それでも国内での4Kテレビの普及、認知の拡大は速かった。ヨーロッパでも同じことがいま、起こりつつある。

ベルリン市内にあるサターンやメディアマルクトといった、日本国内でいうところの大手家電量販店のテレビコーナーに足を運ぶと、代表的なテレビメーカーのさまざまな薄型テレビが並んでいるが、店頭に視聴機が置かれ、イチオシの商品として紹介されているのは各ブランドの4Kテレビだ。

IFAで4Kテレビが展示され始めたのは2012年頃からのことだが、当時は各社とも先進技術の粋を集めたフラグシップとして紹介していた。ところが今年のIFAではテレビメーカーの中上位に位置づく主力機種はほぼ4Kモデル。反対に、フルHDの製品をわざわざこのIFAで紹介しているメーカーは少なかった。

4Kテレビのネクスト・ステップとして、各社が取り上げていた「HDR(ハイダイナミックレンジ)」の技術についてはそれぞれのブースに技術解説と現行機種とのイメージ比較のスペースを設けている。さすがにHDRについてはまだコンテンツが十分に揃っておらず、既に対応しているテレビも少ないが、サムスン電子はIFAを舞台に同社の主力ラインアップである4Kテレビの「SUHDシリーズ」を近く全機種アップデートによりHDR対応としていくことを宣言した。

●次世代BDディスクに関連する発表もあった

HDRといえば8月24日に規格のライセンシングがスタートした「Ultra HD Blu-ray」について、パナソニックやソニーがどんな発表を行うのか期待されていたが、パナソニックは試作機のモックアップを展示するまでに留め、ソニーについてはハードもソフトも関連する発表はなかった。

一方、サムスン電子はUltra HD Blu-rayプレーヤーの試作機を発表。型番を「UBD-K8500」とし、ブースにはデモ映像も流せる実機を展示して注目を浴びた。さらに20世紀FOXとのパートナーシップにより、来年初頭にはUltra HD Blu-ray対応のパッケージソフトの商品化にも力を注いでいくことを発表している。もちろんパナソニックとソニーもそれぞれにロードマップをつくって次世代BDディスク関連製品の投入時期を慎重に検討しているはずだ。順当に進めば、来年初頭に米ラスベガスで開催するCESで各社による商品発表がありそうだ。

●パナソニックが高画質4K有機ELテレビをヨーロッパで発売へ

もうひとつ4Kまわりの製品で、今年のIFAで大いに注目を浴びた製品がある。パナソニックが10月にヨーロッパで発売する有機ELテレビ「TX-65CZ950」だ。

画面サイズは55インチで、パネルの両サイドが湾曲している“カーブドTV”だ。本機は昨年のIFA2014でも元になるコンセプトを盛り込んだ試作機を紹介していたが、いよいよ家庭向けのテレビとしてヨーロッパで日の目をみることになる。国内で発売するかどうかも決まっていないが、その圧倒的な高画質には目を見張るものがあった。

パナソニックのブースの入口に展示されていた実機には期間中人だかりが途絶えることがなかったほど。有機ELの家庭用テレビといえば、日本国内でもLGエレクトロニクスが商品を発売しているが、ここにパナソニックが加わって、とくにハイエンド画質のテレビとして人気が定着してくれば、他社も黙って手をこまねいていないはずだ。HDRとともにテレビ市場を活性化する先進技術の発展に期待したい。

●ハイレゾ対応の手頃なポータブルオーディオプレーヤーが目白押し

オーディオのハイライトは何と言っても「ハイレゾ」である。ハイレゾの人気は日本を中心としたアジア地域だけのものと言われることもあるが、少なくともIFAに集まってくる来場者はハイレゾ関連の商品を大いに気にしているし興味を持っている。ブースの試聴展示の賑わい振りを見れば明らかだ。

ヨーロッパのハイレゾブームは2013年のIFAで多数の製品群を発表して以来、ソニーが牽引しているイメージもあったが、いまやハイレゾはソニーだけのものではない。パナソニックは昨年のIFAで復活を宣言した「テクニクス」ブランドの新製品を発表。人気の拡大・浸透のために次の手を打ってきた。アンプ内蔵のネットワークオーディオプレーヤー「SU-G30」やデータリッピングサーバー「ST-G30」、復活後初のヘッドホンとなる「EAH-T700」や超弩級クラスのアナログターンテーブルの開発を進めていることを発表した。さらに女性も気軽にいい音が楽しめるよう、スタイリッシュでコンパクトなセットオーディオ“OTTAVA”「SC-C500」も新しくラインナップに加わる。

ソニーはハイレゾ対応ウォークマンの新製品「NW-ZX100」「NW-A20」を発表。使いやすさと高音質、同梱するハイレゾ対応のノイズキャンセリングイヤホンなどを含めて一気にユーザー拡大を図る。今までのソニーのヘッドホンにはなかったカラフルな色合いが特徴の「h.ear(ヒアー)」シリーズもIFAで発表された目玉製品の一つだ

ハイレゾ対応のポータブルオーディオプレーヤーはウォークマンのほかにも、パイオニアがブランドとして初めてのプレーヤーになる「XDP-100R」を発表。オンキヨーもより高音質、スタイリッシュに洗練させた「DP-X1」をラインアップに加える。どちらの製品も日本での発売や価格に関するアナウンスがなかったものの、それぞれのブランドのファンならずとも今後の動向が気になる製品だ。(オーディオ・ビジュアルライター 山本 敦)