第24回 東京国際映画祭で新作『ダムライフ』が上映された北川仁監督

「PFFアワード」のグランプリ受賞作品を東京国際映画祭「日本映画・ある視点部門」で特別上映する提携企画が、昨年に引き続き実施され、26日に本年度のグランプリを受賞した北川仁監督の『ダムライフ』が東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映された。上映後には北川監督が舞台挨拶に登壇し、作品が生まれた背景や撮影の舞台裏を語った。

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主人公は幼い頃、誤って妹を殺してしまった小谷。過去のトラウマによって、どんなことも言われた通りにしかできない人間になった彼は、究極の“イエスマン”として今はダム建設現場で周囲からバカにされ苛めを受ける日々だ。しかしある出来事を機に「言われた通りに行動した結果、他人を殺すことは良いこと」と思い込んでしまい、暴走を始める……。北川監督は実家がお寺で、現在は映画監督と僧侶の二足のわらじをはくというユニークな経歴の持ち主。虐げられた者の反逆と狂気を、ブラックユーモアを交えて描く本作は、昨年夏に監督自身が約1か月間参加した“修行”での経験がベースになっているという。「言い方は良くないが、修行中は閉鎖的な空間で、意味の分からないことを延々とやらされる。頭で理解できなくても『ハイハイ』って従い続けている自分に気づき、『イエスマンも度を超すと、とんでもないことになるんじゃないか』と考えるようになった」。

先日は、釜山国際映画祭唯一の国際コンペティション部門“New Currents Award”に招待されたばかり。「向こうの人はリアクションが大きくて、解釈もストレート。前半は笑い声も聞こえたが、後半からは『もうやめてー』なんて悲鳴も(笑)。上映後のお客さんもすごい熱気で、写真を撮られたり、サインを求められたり。あちらではスターのような顔して生きてました(笑)」と刺激的な体験だったようだ。

「今のところ、現実的には映画一本で生活するのは難しい。お金を稼ぐのはシビアなこと」と現状を語る北川監督。この日、客席には両親の姿もあり「親の手前言いにくいが、(軌道に乗れば)迷うことなく映画の道に進みたい。まあお坊さんは定年もないし、資格はもう持っているので」と“監督宣言”も飛び出した。

「第24回東京国際映画祭」
30日(日)まで開催中