<売れるワケ>ヤマハ、プロが唸る電子ピアノ、ロングヒット「アリウス」の秘密

2015.9.18 19:20配信
ヤマハミュージックジャパンの楽器営業本部マーケティング部ピアノ・EKB課の藤井陽介アシスタントマネージャーと電子ピアノ「ARIUS(アリウス)」YDP-162R

「鍵盤から指を離したときに、吸い付いてこない」「押したときの深さが足りない」。ヤマハミュージックジャパンで電子ピアノを担当する楽器営業本部マーケティング部ピアノ・EKB課の藤井陽介アシスタントマネージャーは最初、ユーザーやピアノの演奏者たちが評価するときに使う独特な言い回しに戸惑いを感じたという。

●2015年の上半期で断トツ

BCNランキングの上半期(2015年1月~6月)の「電子ピアノ」部門で、ヤマハの「ARIUS(アリウス) YDP-162R」は販売台数シェア12.6%の首位だった。これに次ぐ2位のカシオの「Privia PX-150BK」の6.2%を大きく引き離した。メーカー別のシェアでは、ヤマハが38.7%、カシオが33.5%、コルグが15.1%だった。

実は「YDP-162R」が発売されたのは2013年の3月。2年以上のロングヒットを飛ばしている。税別平均単価も約7万5900円で、競合の約3万2600円よりも倍以上の価格にも関わらずだ。高単価でありながら販売台数も多く、収益貢献度の高い電子ピアノなのだ。

ユーザーが評価するポイントは、その音色や弾き心地、鍵盤をたたいたときの質感にある。冒頭のコメントのように、ピアノを演奏する人は指先の感覚にとても敏感だ。単純に鍵盤のたたき具合が硬いとか柔らかいというだけでなく、クラシックピアノのような弾き心地や多彩な音の表現力を求めている。

●ピアノ教室の環境を自宅でも再現

クラシックピアノは同じ鍵盤でも強くたたけば大きくて迫力のある音に、弱くたたけば柔らかくてやさしい音色になる。強く長く押せば鋭く伸びる音が出るし、強く短くたたけば弾むような音になる。鍵盤が低音域では重く、高音域になるほど軽くなる。「YDP-162R」は、クラシックピアノのような微妙なタッチの違いによる表現力も再現している。

電子ピアノというと多機能でさまざまな音色が楽しめるものをイメージしがちだが、クラシックピアノの質感や弾き心地を求めるユーザーは多い。というのも、「YDP-162R」の購入客の多くが、ピアノ教室に通う子どもを持つ親などだからだ。教室で教わったクラシックピアノの弾き方を、自宅でも同じように練習したいというニーズである。

しかし、自宅に大きくて重く、高級なクラシックピアノを置くわけにはいかない。そうしたユーザーの悩みをうまくとらえたことが、シェアトップにつながっている。

フットペダルの位置もこだわる。奥行きはクラシックピアノよりもずっと浅い「YDP-162R」だが、椅子に座って足を伸ばしてペダルを踏むまでの距離や角度、踏み心地は、意識してクラシックピアノと同様に作られている。操作ボタンもシンプルな機能に絞って、鍵盤の左端のスペースに収めている。

「電子ピアノを購入する人は、必ず実際に家電量販店などでピアノを触って確認する。過去にピアノを弾いたことがある経験者にも、違和感のない弾き心地が伝わるはず」と語る藤井アシスタントマネージャー。100年以上ピアノをつくり続けいているヤマハだからこそつくれる「弾き心地」なのだろう。(BCNランキング 細田 立圭志)

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