特殊なスーツによって身長1.5センチに縮小する異色のヒーローの誕生を描いた『アントマン』が公開中。『アベンジャーズ』シリーズのマーベル・スタジオからまた新たなキャラクターが登場した。
バツイチで無職、前科ありのスコット・ラング(ポール・ラッド)は、ひょんなことから知り合ったピム博士(マイケル・ダグラス)から、彼が開発した特殊スーツを身に付けて体を縮小させ、アリと共に行動する「アントマン」となることを頼まれる。そして、博士の娘ホープ(エヴァンジェリン・リリー)がスコットをヒーローにすべく特訓する。
ミクロ化した人間が他人の体内に入る『ミクロの決死圏』(66)や『インナー・スペース』(87)、子どもたちがミクロ化して庭で大冒険を繰り広げる『ミクロキッズ』(89)など、縮小した人間が活躍する映画は過去にもあったが、本作は、それらよりも遙かに発達した特撮を駆使して、“アリサイズ”となったスコットの目線で、巨大化した浴槽やレコード盤などの日常風景を見せるほか、彼と行動を共にするアリたちの姿も違和感なく生き生きと描いている。
ストーリーに目を移すと、かつて『イエスマン “YES”は人生のパスワード』(08)でバツイチ男の再出発を描いた監督のペイトン・リードが、本作でもバツイチ男スコットの再起をユーモアたっぷりに描いている。さらに、スコットと娘のキャシー、ピム博士とホープという二組の父と娘の和解、スコットと愉快な仲間たちというサイドストーリーも加えて物語の幅を広げた。
また、ダメ男が娘恋しさにヒーローとなるけなげさや意外性を巧みに表現したラッド、大ベテランのダグラスが見せる硬軟取り混ぜた貫禄の演技、アクションに開眼したリリー、スコットの仲間をひょうひょうと演じたマイケル・ペーニャなど俳優たちのアンサンブルも楽しめる。
とは言え、本作はあくまでも物語の序章に過ぎない。今後はスコットをはじめとする登場人物たちのその後や、『アベンジャーズ』との関係も描かれていくことだろう。数珠つなぎのヒーロー話として広がり続けるマーベル・スタジオ映画。恐るべし。(田中雄二)
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