柴田泰樹役の草刈正雄

 戦災孤児の奥原なつ(広瀬すず)に人生を生き抜くすべを教える、柴田家の祖父・泰樹を演じる草刈正雄。強い精神で北海道開拓に挑み、偏屈で頑固ながらも、深い愛も持つキャラクターは、NHK大河ドラマ「真田丸」(16)で演じた、真田幸村の偉大な父であり天才武将の真田昌幸をほうふつとさせ、自身も「昌幸のつもりでやっています」とあっけらかんと話す。初のおじいちゃん役に感慨をにじませる草刈に、役に込めた思い、撮影時のエピソードなどを聞いた。

-朝ドラ出演は「走らんか!」(95)「私の青空」(00)に次いで3回目ですが、オファーを受けたときのお気持ちは?

 うれしかったです。じじいの役が初めてなので、こういう年になったか…と感じながら、究極の頑固じじいを楽しもうと思いました、でも一番うれしかったのは、演出家やスタッフの半分ぐらいが“真田”で一緒だったし、大森(寿美男)さんの脚本を読んだときに、真田の雰囲気があったことです。泰樹は昌幸の生まれ変わりじゃん、楽しそうだな!と小躍りして喜びました。真田で言っていたせりふも時々入っていますよ。

-演出で昌幸らしさを求められることもあるのでしょうか。

 演出家からの注文は全くないけど、僕は昌幸のつもりでやっています(笑)。脚本を読むと、作品を越えた昌幸に対する愛情が感じられてうれしいです。役者冥利(みょうり)に尽きます。

-高畑淳子さん演じる、菓子屋雪月のおしゃべりなおばあさん・小畑とよと泰樹のやり取りは、まさに「真田丸」での夫婦・薫と昌幸ですね。

 大森さんの狙いですよね。高畑さんとは気心が知れた仲でもあるので、安心し切って、楽しくやっています。でも、脚本にしっかりとした会話劇が出来上がっているし、方言もあるから、アドリブは入れてないんですよ。

-一方で泰樹には、なつに生きるすべを教えるという大事な役目もありますね。

 そういう役回りがくるようになりましたね。大事な役を頂きました。また、せりふがいちいちいいんですよ。僕も年を取って泣き虫になったから、胸にきて、すぐに涙ぐんじゃいます。だからこそ、余計なことを考えずに素直に表していきたいです。

-泰樹は18歳の時に一人で十勝に入植した北海道開拓移民ですが、その点では、どのような役作りを?

 撮影に入る前に十勝開拓者である依田勉三さんのドキュメンタリー番組を見ました。ほとんどの人が諦めて故郷に帰る中、勉三さんの一団は粘り強く開墾を続け、礎を築きました。それぐらい開拓は本当に大変なことなので、とてつもない頑張りと諦めない精神を感じました。なつが上京して漫画映画に関わるのも開拓精神ですよね。泰樹から開拓魂を受け継いでいるので、「諦めるなよ」という思いを込めて演じています。

-草刈さんは泰樹に似ている部分をお持ちですか。

 僕はイジイジしてどうしようもない真逆の人間です。泰樹はスケールが大きくて憧れるし、そういう自分とかけ離れた役を演じることは面白いです。そういえば、昌幸も豪快でしたね(笑)。

-酪農作業は大変でしょうが、特に苦労したことはありますか。

 馬車に乗ったり馬と触れ合ったりするのは楽しいけど、牛の搾乳は難しかったです。すずちゃんとか女性の方がうまくて、僕や小林(隆/柴田牧場の従業員・戸村悠吉役)くんは、できるようになるまで時間がかかりました。お乳を出せるようになっても、今度はコントロールがうまくいかなくて、なかなかバケツにきれいに入らなくて苦労しました。

-ヒロインを演じる広瀬さんの印象をお聞かせください。

 プロフェッショナルですね。出ずっぱりで、せりふも多いけど、いつも平気な顔をしているからすごい根性だなとびっくりします。とてもきっちり仕事をやっていて安心できるので、彼女が座長であることは僕にとってラッキーでした。

-なつの幼少期を演じる子役の粟野咲莉ちゃんもプロ意識が強く、草刈さんとの共演シーンでは演技に納得いかず、リテークを求めたそうですね。

 そうそう(笑)。2人でアイスを食べるシーンで、彼女は泣きたかったんだけど泣けなかったみたいで、その後ずーっと悩んでいましたよ。そうしたら、「もう一度やらせてください」と言い出したから、「おっ!」と思いました。でも撮り直しをして正解でした。2人ともいい仕事ができました。彼女に限らず子役もプロだから、こっちも同じ俳優として遠慮せずに芝居をしていますが、最近の子役はすごいですね。負けていられません。

-最後に読者にメッセージをお願いします。

 スタッフ・キャスト全員のエネルギーがこもっているドラマなので、それが画面から伝わると思います。なつが東京に行った後も、ちょこちょこ顔を出すので、泰樹のことも忘れずにすてきなホームドラマを楽しんでください。

(取材・文/錦怜那)