皮肉に満ちたMCに
涙腺崩壊のラブソングまで

MCではお寺の現状を憂うトークも。お寺の数は約7万5000箇寺、コンビニエンスストアは約4万店。なんと、お寺はコンビニより数が多いのだ。

藤岡さんは「コンビニ、頑張れ~?」と一見余裕そうだが、現状は大変らしい。

葬儀の方法は多様化し、それ以前に生活とお寺が遠い存在になってきている。だからこそ、こうしたイベントが重要になってくるのだろう。

そして、MCがめちゃくちゃうまい。

ノリノリなロックンロール。ツイストで踊る坊さんを初めて見た。

お客さんもお坊さんも、大盛り上がり。

また「宗教入れば結婚できる! お金が儲かる! 宗教最高!!」と高らかにシャウトしたあと、「こうした宗教にはお気を付けください」という皮肉の利いたコメントがあり、宗教全般への偏見をやんわり取り除きつつ、偏った考えにはさりげなく注意を促すような印象があった。

坊主たちは販売促進にも余念がない。

「お寺に来てくれると嬉しい。そして物販でグッズを買ってくれると嬉しい。値段は1000円から。あとは“お気持ち”です」

リーダー藤岡氏のソロコーナーでは、実体験をもとにした切ない弾き語りも披露された。先ほどまでテンション高く絶唱していた姿とは対照的に、眠れぬ夜に作ったという幼き日の淡い恋心を歌い上げる。ウィンドシンセサイザーを演奏するのは、檀家さんで元プロなんだとか。

「霊柩車に乗って」極楽往生!?

皆さんお持ちの「煩悩」についてのお話も。煩悩は捨てたいと思うものだが、実は悪いだけのものでもないらしい。煩悩は生きるエネルギーでもあり、うまく付き合っていくことが大切なんだとか。なんだかちょっと気持ちが楽になった。

最期、いや、最後にふさわしい(?)「霊柩車に乗って」でラスト。

霊柩車に乗り焼き場に行くシチュエーションの曲。感傷的な気分になるかと思いきや、お坊さんたちにとってはこれも日常の風景の一部なのだ。みんなで楽しく、あの世行き極楽往生バスツアーに乗っているかのような、朗らかな曲だった。こんな往生なら悪くない。

坊主バンドを一言で表現するならば、『和を以て尊しと成す』集団だろうか。

観客に優しく、魅力があり、包容力がありすぎて、この人たちとならあの世に行ってもなんとかなりそう……と思わせてくれる。また、お坊さんたちの言葉に対する会場のリアクションも温かかった。

坊主バンドには三人の檀家さんも参加していた。皆さん忙しくて、集まっての練習は4、5回しかできなかったそうだが、あくまでも語り(説法)がメインなので、演奏は控えることを意識していたそう。

坊主バンドの魅力について聞いてみた。

「堅苦しくないところですね。普段、我々やお坊さんが思っていることをぶっちゃけてくれるから、すごく親しみやすいんです。曲もただの面白ネタではなくて、そこにアンチテーゼが含まれていますし。世間一般の仏教やお坊さんに対するイメージをいい意味で裏切ってくれます(笑)」

<坊主バンドセットリスト>
1.和尚さん
2.俺たちボンサン
3.お寺に入ろう
4.宗教ろっく
5.養子に行きたい
6.西田さん
7.僕のおちんちん
8.煩悩ファンク
10.輪廻転生
11.霊柩車に乗って