左から 利重剛、愛加あゆ 左から 利重剛、愛加あゆ

2014年、Amazon和書部門の1位になったベストセラー『嫌われる勇気』。アドラー心理学を“哲人と若者の対話”の形式で平易に解説した書籍だ。この本を原作に、第22回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞した和田憲明が、サスペンス溢れる人間ドラマに仕立てる舞台がまもなく開幕する。出演する利重剛、愛加あゆに話を聞いた。

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心理学者アドラーの思想を解説した本を、一体どうやって芝居にするのだろう?「面白いこと、考えますよねぇ」と利重が言えば、愛加も「最初にお話を頂いた時、まったく想像がつかなかったです」と笑う。役どころは、利重がアドラー心理学を研究している大学教授、愛加は両親を惨殺した殺人犯の女。和田は、原作に登場する“哲人と若者”をさらに複数の登場人物に分割、その人間関係を描くことで物語性を深めた。その物語が、かなりサスペンス!

娘の死が自殺ではないかと疑っている刑事が、死んだ娘が熱心に通っていたという大学教授の研究室を訪ね、そこで“世界はどこまでもシンプルである”“人は変わることができる”“そして、だれでも幸福になれる”というアドラーの思想を聞く。刑事は、まさに今抱えている事件とその犯人を思う。その犯人の女は、両親を惨殺し、自殺を図ったが死に損ない、逮捕された。その女もまた変わることが、そして幸福になることができるのだろうか?そして事件の真相は…?

キーパーソンである殺人犯の女を演じる愛加は、元宝塚トップ娘役。ストレートプレイに出演するのも、これが初めてだ。「今、稽古でとことん苦しんでいます。宝塚は、作り上げた夢の世界。今やっているのはまったく逆。いかにリアルに、その人がそこに生きているかのように演じるという難しさを、痛感しています。でもこの役は、役者なら絶対やってみたいと思うものが、ギュッと詰まったような役どころなんです。これをきっかけに新しい自分が出せたら。それに私はこれで初めてアドラー心理学というものを知ったのですが、今までずっと悩んでいたことで、これを読んですごくすっきりした部分があった。たくさんの人にこの話を知って欲しい」と意気込みを力強く語る。

一方、個性派俳優としてドラマや映画にとひっぱりだこの利重だが、彼も10年ぶりの舞台出演。こちらは愛加とは対照的に、「毎日同じセリフを言える舞台って、楽しいですねぇ。今日はどんな言い方してみようかなって考えるのが幸せ」と笑顔だ。ただ彼もまた「心理学に興味のある方も観にいらっしゃるでしょうし、あそこちょっと違うんだよな…って思われたくない。アドラー心理学、かなり詳しくなってると思います(笑)」と、セリフに書かれた以上の勉強をする毎日だ。

ふたりの充実した表情から伝わるのは、面白い作品の誕生の予感。「泣いて笑ってためになるタイプの話じゃないですけど、すごく面白いですよ。説教臭い話じゃないので、単純にサスペンス好きな人も、ぜひ」(利重)。

9月26日(土)から10月4日(日)まで、東京・赤坂RED/THEATERにて。チケットは発売中。