9月19日にオープンした「コジマ×ビックカメラ港北東急S.C.店」は駅前ショッピングセンターの2階に約2900平方メートルの売り場を展開

ビックカメラグループのコジマは9月19日、神奈川県横浜市都筑区に「コジマ×ビックカメラ港北東急S.C.店」をオープンした。わずか直線距離で1km以内にヤマダ電機、エディオン、ノジマがあり、家電量販店大手4社の激戦が予想される。

●わずか1km以内にヤマダとエディオン、ノジマが密集

新店は、横浜市営地下鉄のセンター南駅前のショッピングセンター「港北東急S.C.」B館の2階フロア(売り場面積約2900平方メートル)にテナント出店した。正社員は35人で、アルバイトは25人の60人体制。駐車場は1400台が止められる。

同店は、駅前店に強みを持つビックカメラと郊外店のノウハウを積むコジマ、女性向けの店づくりで2011年にオープンして話題となった「コジマ×ビックカメラ成城店」のノウハウがミックスされている。オープン前に約700人(ビックカメラ発表)が並び、店舗の入り口ではコジマの木村一義会長兼社長自らが「いらっしゃいませ!」と大きな声で来店客にチラシ手配りをするなど、激戦区の初戦を制するため意気込んでいた。

横浜市営地下鉄のセンター南駅は、横浜駅と東急田園都市線のあざみ野駅を結ぶブルーラインと、東急東横線の日吉駅とJR横浜線の中山駅を結ぶグリーンラインが乗り入れている。あざみの駅からは3つ目で、都心に近いベットタウンとして30代や40代のファミリー層が多く住むエリアだ。1日当たりの乗降客数は約7万8500人(2014年度)で、同じ沿線では、あざみ野や日吉、センター北などと同クラスの規模を誇る。

商圏の設定は半径約3kmとするが、店から直線距離でわずか1㎞以内に家電量販店が4店舗も密集する。1km先のセンター北駅には「ノジマセンター北店」がある。センター南駅とセンター北駅を結ぶ道路沿いに「ヤマダ電機テックランドNew港北センター本店」と「エディオン港北センター南店」が店を構えている。

競合店との差異化について網代義明店長は、「特に平日の昼間は女性客が多いので、売り場も女性のお客様が楽しめるようにカラフルなコーナーづくりを意識した」と説明する。網代店長は横須賀店の店長時代、「コジマ×ビックカメラ成城店」の店長と面識があり、よく情報交換をしていたという。

●女性客を意識したコーナーづくり

成城店は富裕層が多く暮らす世田谷区成城にあり、女性スタッフを意識的に多く配置した女性視点の売り場づくりで話題になった店舗だ。そのノウハウが今回、注入されている。

店内に入ってスマートフォン売り場を抜けると、キッチン家電のコーナーが広がる。ジューサーやミキサーのほか調理雑貨などの関連商材を展示している。エスプレッソマシンの試飲実演コーナーの後ろには、赤や緑、白、黄色のカラフルなシリコンボトルが並べられている。

メーン通路で一番目につくエンドには、価格が21万円(税抜)もするイタリア製の本格的なエスプレッソマシンや、自宅で生のコーヒー豆を焙煎する7万5800円の焙煎機も展示。珍しい海外のデザイン家電の展示が目立つ。

商品の回転率は下がるが、話題づくりや「あの店にいけば何かある」と思ってもらうことを意識したという。エンドから中に入っていくと「おうちカフェ」としてコーヒーメーカーや給湯ポット売り場へと移っていく。

●都市型と郊外型をミックス

柱周りに関連商材を立体的に展示するノウハウは都市型のビックカメラが得意とする展示手法だ。例えば、オーブントースターのキッチン家電コーナーにはキャラクター弁当や動物の形をしたご飯が入った弁当を作るときに便利なグッズが並ぶ。

メイン通路は幅が広く取れられているが、コーナーの中に入ると幅は約1m30cmと郊外型の「コジマ×ビックカメラ」よりは狭く感じる。什器の高さも約1m40㎝とやや高く感じた。約2900平方メートルの限られた売り場面積で品揃えをアピールする都市型のビックカメラのノウハウが反映されている。

柱の上のブラックボードに描かれた手書きPOPは、郊外型のコジマで積極的に取り入れている手法だ。弁当の作り方と一緒にグッズを飾ったり、消費者の生活に密着した情報を発信しているのが分かる。従来よりも立体的に見えるように進化している。

●店員がつくるコーナーからは楽しさが伝わる

「コジマビューティー」と題したビューティー家電コーナーはさらに力が入る。什器は家電量販店でよく見られるものと違う。売り場のスタッフが自分たちで棚を探してコーナーづくりをしているという。

自分たちのアイデアが反映される店づくりは、スタッフのモチベーションアップにもつながっている。画一的な売り場とは違い、その店ならではの企画やアイデアからは楽しさも伝わる。

コジマビューティーのコーナー奥では、マネキンを使った立体的な展示や、ヘアアイロンを使って「ストレート」や「カール」「ボリュームアップ」が楽しめることを分かりやすく伝えている。その隣の什器も、ボックスタイプの棚を使っているのが分かる。

店員のアイデアから生まれる売り場づくりはビューティー家電だけでなく、照明器具のコーナーでも同じだ。家電量販店の照明器具の売り場は同じような商品ばかりが並んでいることが多い。アイテム数が多いODELICのLEDペンライトを展示することで、照明器具を選ぶときの本来の楽しさやワクワクが感じられるコーナーづくりになっている。

●ドライヤーはすべて体感OK

「コジマ×ビックカメラ」では、売り場での体感コーナーも積極的に進めている。例えば、展示しているドライヤーはすべて電源を差して体感できる。ここでもカラフルな展示のポリシーが反映されている。

イヤホンやヘッドホン売り場でも視聴を促すための気が利く工夫が施されている。ヘッドホンを耳に装着したときの自分のスタイルがチェックできるように、顔の高さに鏡が設置されているのだ。そこには、ウエットティッシュとゴミ箱も用意されていて、試聴する際に拭き取れるなど、ちょっとした気づかいがうれしい。

新しいアイデアとしては、ヘッドホンの下に顧客が所有するモバイル機器を置いて試聴できるように、滑り止めシートを設置した。これも体感を促すための工夫だ。

●コジマ初の「高級腕時計」売り場

コジマ初となる「高級腕時計」売り場も見どころの一つ。先ほどのビューティー家電コーナーの隣に設置した。網代店長自らが企画したこだわりのコーナーだ。セイコーやシチズン、カシオなどの国産腕時計のほか、コーナーでは最高額となる91万7800円のロレックスまで揃っている。

「舶来腕時計はこの地域で一番の品揃えだと思う。女性のお客様が楽しんでいただけるように、あえてビューティー家電売り場の隣に設置した」と、網代店長は胸を張る。腕時計が充実しているという口コミ効果で、女性客の来店頻度を増やす狙いがある。

家電量販店4社がひしめく激戦エリアで、都市型と郊外型、女性向けノウハウをミックスさせた「コジマ×ビックカメラ港北東急S.C.店」の新しい挑戦が、どのような形でマーケットにインパクトを与えるか。オープン後も目が離せない。(BCNランキング 細田立圭志)