「何度も警察のやっかいになる姉弟」と聞くと物騒ですけれど、『リコーダーとランドセル』に登場する宮川あつみ、あつしの姉弟がピッタリ当てはまります。主人公のあつしは身長180センチのイケメンですが小学5年生。クラスメイトの女子と鬼ごっこでもしていれば、確実に警察に通報されます。姉のあつみは高校2年生。でも外見は小学生にしか見えません。ですからちょっと遅い時間に繁華街を歩いていると、警察や補導員に注意されてしまいます。そんなアンバランスな2人を描いた4コマ漫画が、竹書房の「まんがくらぶオリジナル」などで連載中の『リコーダーとランドセル』(東屋めめ)です。

弟のあつしは無邪気なもので、警察に捕まっても「なんで?」と、一向に気付く様子がありません。そろそろ理解しろよと思うんですが、好奇心や冒険心が優ってしまうんでしょうね。ただ顔見知りの婦警さんができたりして、警察の方が慣れてきたようです。でも通報があれば駆けつけなくてはいけないのが、警察のお仕事です。「また宮川君なのね」と嘆きつつも、何事も無いことに安堵します。また最近ではあつしがクラスメイトのお母さん達に人気があることも判明しました。母親でも妻でも、女性であればイケメンが好きなのは当然か。それはそれで騒動のタネになるのですが、相変わらずあつしは「ふーん」と無邪気なままです。

一方で姉のあつみは、ちゃっかりとしたたかなところを見せています。映画館を子供料金で利用したり、子供向けのグッズなどを貰ったり。つみ自身が主張しているわけではありませんが、周囲が勝手に勘違いするところに、うまーく乗っかっています。もちろん姉弟で行動することが多いので、一緒にいるあつしは大人と勘違いされて、グッズが貰えないなどの目に合うのですが、そこはお姉さんのあつみがフォローして、バランスが取れているようです。お菓子作りなども上手で家庭的なあつみなので、ちゃんと扱ってくれるボーイフレンドでもできればと思っているのですが、変なのに目を付けられたりして、なかなか良い方向には行きそうにありません。作者の胸先三寸に期待しましょう。

この『リコーダーとランドセル』が2012年の1月から、『リコーダーとランドセル ド♪』のタイトルでアニメ化、弟のあつしを置鮎龍太郎、姉のあつみを釘宮理恵が声を当てています。アニメでも主人公はあつしなのですが、フォロー役でしっかりもののあつみに、なんとなく目が行ってしまいます。声を当てている釘宮理恵は、個人的には『灼眼のシャナ』のシャナ役が思い出されます。「そういえばシャナも小柄だったな」と思ったのですが、他にもいろいろ声を当てていますし、さすがに偶然か。でもシャナとあつみで漫才などを聞いてみたい気がします。もちろん釘宮理恵の1人2声になるのですけども。4月からも『リコーダーとランドセル レ♪』として、アニメ2期がスタートします。原作にも余裕があるので、このままミ、ファ、ソと続いて欲しいものですね。放送局はテレビ埼玉やKBS京都と共に、ニコニコ動画でもネット配信されています。漫画と共にお楽しみください。

そのネット配信ですが、以前はアニメ化となると、東京、名古屋、大阪などの大都市はともかく、「私の住んでいるところでは放送されるのかなぁ」と心配する地方の人も多かったはず。インターネットが普及したことで、ネット配信される番組も増えています。そんなネット配信されたアニメの1つが『ゴクジョッ。~極楽院女子高寮物語~』です。メインは中京テレビで放送されている「SKE48の世界征服女子」内での放送ですが、もちろん中京テレビでは愛知県を中心とした東海地域しか見ることができません。そこでDMM.comにてネット配信することにより、中京テレビ以外の地域でも視聴可能になっています。

原作は宮崎摩耶の描く漫画で、集英社の「グランドジャンプ」にて連載中。栃木県にある名門お嬢様高校の極楽院女子高等学校、通称極女(ごくじょ)に通う女子高生の日々を描いています。お嬢様高校ですから、皆清楚で折り目正しい……なんてことはなく、一癖もふた癖もあるツワモノ揃いの生徒達だらけです。女子高生の興味の対象が常にそっちだけとは思いませんが、往々にしてシモネタに走ってばかりいます。「これをアニメにするにはいろいろ問題になるだろうな」と思っていたら、案の定、中京テレビでは何度も放送自粛になりました。

漫画では書き手も編集も一箇所で、それが全国に配本されるのですから、(海外版はともかく)表現が変わることはありません。しかしアニメなどの場合には、放送局の基準が統一されていないことから、局が異なるとそのまま放送されたりボカシが入ったりすることがあります。アニメ『ゴクジョッ。~極楽院女子高寮物語~』を放送するのは中京テレビだけにも拘わらず、事前のすり合わせが上手く行かなかったのか、度々放送自粛が行われました。ただ漫画にほぼ沿った形でアニメ化されたのは間違いありません。企画を通した関係者の努力あればこそだと思います。

その自粛となった話の1つが「第5話 宇都宮式 霊感カゼ治療」です。風邪で寝ている赤羽亜矢(声:日笠陽子)の所に、自称霊感少女の宇都宮飛鳥(声:ささきのぞみ)がやってきて、彼女なりに風邪を治そうとします。もちろん「自称霊感少女」ですから、尋常な方法ではないんですよね。しかし亜矢は疑うことなく、それに従っていきます。予想通りにシモネタに走った治療法ばかりですので、あまり詳しく書くわけには行きません。それこそ中京テレビばりに自主規制したいと思います。気になる方はコミックスかDMM.comをご覧ください。先に「シャナとあつみで漫才」と書きましたが、この話の亜矢と飛鳥の掛け合いも、まさに漫才のようです。どこかネジの抜けたような亜矢と、常に冷静沈着でマイペースの飛鳥のやり取りが、漫才コンビのボケと突っ込みそのままでした。声を当てていた日笠陽子とささきのぞみの2人がさすがなのでしょうね。実力と共に人気のあるのも理解できます。

グランドジャンプでの連載は続いていますが、『リコーダーとランドセル』と違って、アニメ『ゴクジョッ。~極楽院女子高寮物語~』の2期は難しそうです。どこかの放送局が冒険してくれないものかと願うばかりですが、ネット配信専門であれば可能かもしれません。関係者の方、よろしくお願いします。

【関連サイト】
TVアニメ「リコーダーとランドセル」公式サイト
「リコーダーとランドセル レ♪」公式PV-YouTube

あがた・せい 約10年の証券会社勤務を経て、フリーライターへ転身。金融・投資関連からエンタメ・サブカルチャーと様々に活動している。漫画は少年誌、青年誌を中心に幅広く読む中で、4コマ誌に大きく興味あり。大作や名作のみならず、機会があれば迷作・珍作も紹介していきたい。