浅野忠信、深津絵里

第68回カンヌ国際映画祭“ある視点”部門で監督賞を受賞した『岸辺の旅』の初日舞台あいさつが10月1日に、都内で行われ、黒沢清監督をはじめ、夫婦役でW主演する深津絵里と浅野忠信、小松政夫、柄本明が出席した。

湯本香樹実による同名小説を原作に、3年間の失踪を経て、突然「俺、死んだよ」と告げに帰ってきた夫(浅野)とその妻(深津)がささやかな旅路に出かける姿を描く。深津と浅野は、三谷幸喜監督の『ステキな金縛り』で共演しており、「あれ以来共演したいと思っていたし、今回相手が深津さんじゃなければ、どうなっていたか…。思いがこうして花開いて、絆を深めることができた」(浅野)、「ありがたいお言葉。愛に形はないけれど、絶対的に強いものだし、愛こそすべてだと分かる映画」(深津)と互いに敬意を払った。

ベテラン俳優の小松と柄本は、そろって「何度もNGを出して迷惑をかけた」と恐縮しきり。それでも、「浅野さんにおんぶされるシーンで何度もNGになったが、今ではそれが一番のお気に入りになった」(小松)、「10回、20回NG出したシーンもあるが、黒沢監督のことが大好きなので、NG出しても不思議と申し訳ないと思わなくて(笑)」(柄本)と大御所らしい貫録を見せつけた。

本作で日本人初の栄誉に輝いた黒沢監督は、「すばらしい原作、スタッフ、キャストにめぐり合い、幸せな経験をした」と感慨しきりで、「大げさな言い方かもしれないが、この幸せを皆さんにおすそ分けしたい。すべての登場人物が幸せではないが、それも含めて最終的に『この作品を見て、良かった』と思ってもらえれば」と締めくくった。

『岸辺の旅』
テアトル新宿ほか公開中

取材・文・写真:内田 涼