各社の激しい攻防が続き、激戦を繰り広げているメモリカード市場。この1年間のメーカー別販売数量シェア推移を見ると、サンディスク、アイ・オー・データ機器(IOデータ機器)、トランセンドジャパンの3社が絡み合うように推移している。一見して1位のメーカーがわかりにくいが、2014年年間で最も販売数量が多かったメーカーを表彰する「BCN AWARD 2015」ではサンディスクがNo.1を取ったが、2015年上半期(2015年1月~6月)ではIOデータ機器が1位を獲得した。

家電量販店の実売データを集計する「BCNランキング」のメモリカードカテゴリは、主流のSDメモリカードだけではなく、microSDメモリカード、コンパクトフラッシュ、メモリースティックなどが含まれる。そのなかでもSD/microSDメモリカードが人気だ。

2015年上半期のトレンドをチェックしたところ、メモリカードの規格別構成比ではSDメモリカードが62.8%、micro SDメモリカードが35.0%と、この二つの規格でほぼすべてのメモリカード市場を占めていることがわかった。

SDメモリカードはデジタルカメラやデジタルビデオカメラなどのカメラ全般で採用されているほか、電子辞書などのモバイル機器でも多く採用されており、活躍シーンは幅広い。一方、microSDメモリカードは、スマートフォン(スマホ)やタブレット端末に挿入し、メモリ容量を増やすために使っているユーザーが多く、大容量化が進んでいる。この人気のSD/microSDメモリカードを主軸に据えて取り組んでいるのがIOデータ機器だ。

●市場を分析し、売れるスペックの製品の層を厚めに用意

IOデータ機器の企画開発部 開発3課の藤溪 智史リーダーに、販売戦略を聞いたところ、市場のトレンドを徹底的に分析し、売れるスペックの製品層を厚くして展開していることがわかった。

藤溪リーダーは「そもそもメモリカードは差別化が難しい。機能の違いはほぼなく、ユーザーは容量と価格で製品を選んでいる。ここ最近のメーカーシェアを見ても1位から3位まで、シェア差がほとんどない」と分析する。

さらに、メモリカードメーカーとしてネームバリューがないというハンデを抱えつつ「シェアを伸ばすために一部の家電量販店とタッグを組んで展開をしている。その一つが売れるスペックの製品に注力すること。SD/microSDメモリカードともに容量は8~16GBが売れ筋。最低転送速度を表すスピードクラスは、価格重視のClass 4、動画撮影に適したClass 10の2タイプに注力している」と藤溪リーダーは話す。

実際、「BCNランキング」データでトレンド分析をしたところ、SD/microSDメモリカードを合算した容量別構成比では8GBが30.3%、16GB28.8%と市場の6割を占めている。スピードクラス別構成比ではClass 10が68.2%、Class 4が29.1%と、合わせて9割以上を占めていた。容量、転送速度とも、まさに売れ筋ラインに力を注いでいるといえる。

品揃えのほか、店頭でのプロモーションにも工夫を凝らしている。「この売れ筋製品を買いやすい価格に設定し店の目立つところにワゴンなどに入れて設置してもらっている」という。

メモリカードに記録した写真・動画データをこまめにPCなどにバックアップする人よりもカードに貯めっぱなしにする人の方が多い。目につきやすいところに設置することで、そういえばメモリカードがいっぱいだったから買い足そう、という「ついで買い」を訴求できる、というわけだ。

●ハイエンドモデルも用意 後半戦はラインアップを拡充

「売れ筋製品を買いやすい価格で」。IOデータ機器の販売戦略だが、もちろん、ハイエンド向け製品も揃えている。今年7月に4K動画撮影に適したUHS対応の「SDU3シリーズ」を投入した。UHS-I規格およびUHS スピードクラス3に対応しており、フルHD動画はもちろん、4K動画やデジタル一眼レフカメラの連写撮影などに適したカードだ。

とはいえ、UHS-I規格は一般的に知られていないのが現状だ。そのため藤溪リーダーは「一般の人には規格の違いが分からないので、用途から選んでもらえるようにパッケージには4K、高速連写に最適などのアイコンを入れた」と説明し、ハイエンド製品の普及にも力を入れている。

また、今後は安いだけではなく、付加価値のついた製品を展開していきたいと話す。「メモリカードにデータ復旧サービスなどのサービスを付けることで差別化を図りたい」と、藤溪リーダーは2015年後半戦も意欲的だ。(BCN・山下 彰子)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。