ICレコーダー部門で上半期No.1を獲得したオリンパス

音声録音に特化したデジタルアイテムであるICレコーダーが、ここにきて転換期を迎えている。ただ音声を記録するだけでなく、ユーザーの需要を喚起し、利用シーンを促すことで、その存在感を高めている。実売データを集計するBCNランキングのICレコーダーカテゴリで上半期No.1を獲得したオリンパスも、ICレコーダーの潜在的ニーズを掘り起こすことで、その真価を追求している。

ICレコーダーはオリンパス、ソニー、パナソニックの3社で95%以上のシェアを占める市場。三つ巴の戦いで15年上半期、オリンパスが獲得した販売台数シェアは42.7%。競合2社を大きく上回り、堂々のトップシェアだ。売上げをけん引したのは、スタンダードモデルの「Voice-Trek 822」。高感度の指向性ステレオマイクや、ノイズを除去して音声部分だけを抽出する「声だけ再生」など、ユーザビリティにこだわったモデルだ。ICレコーダーだからこその高機能と価格帯の手頃さがユーザーの心をとらえ、機種別の販売台数シェアで約5%を占めるまでに伸長した。スタンダードモデルをしっかり打ち出している一方で、オリンパスが次なる一手として注力しているのが、スティック型のICレコーダーだ。

スティック型のICレコーダーはソニー、パナソニックの競合2社はすでに展開しており、今年4月に同型のモデルを発売したオリンパスは後発となる。その強みを生かして、「Voice-Trek VP-10」はスティック型にユーザーが求めている需要をとことん深掘りした。

「さりげなく使う、ポケットに入れて使うなど、スティック型だからこその利用シーンで最大限メリットがある形状・機能を追求しました。例えば、ポケットモード。ポケットの中に入れて使用する特殊な状況下でもクリアな音で録音できるよう、自動で設定を最適化します。布がこすれる音を低減する『擦れ音フィルター』も利用シーンが明確に想定できているからこその機能です」と、映像営業統括部の小林剛課長代理はこだわりのポイントを語る。

ユーザーからの反応も好感触だという。「スタンダードモデルよりは価格帯が高いスティック型だが、選ばれているということは、その付加価値をしっかり認識いただいているのだと思う」と、小林課長代理はその理由を分析する。下半期の戦略として重要視するのも、スティック型含めてオリンパスのICレコーダーのメリットや具体的な利用シーンをユーザーに伝えることだ。「新しい需要を掘り起こさないことには市場は縮小してしまう。これまで想定されたシーン以外でのICレコーダー活用を提案することで、ユーザーの関心を喚起したい」(同氏)。

堅実な録音機能を備えたスタンダードモデルからスマートフォンと連携する多機能モデルまで、多彩なラインアップを用意するオリンパス。高品質の録音性能だけでなく、かゆいところに手が届く使い勝手のよさを訴求することで、年間No.1を狙う。(BCNランキング・大蔵 大輔)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。