BCNランキングのインタビューに応じるトレンドマイクロの大三川彰彦取締役副社長

家電量販店の実売データを集計する「BCNランキング」の2014年9月~15年8月のPC販売は、金額ベースで前年同月比2ケタ減が続いている。台数ベースでも昨年11月の91.7%を除けば2ケタ減が続く。ところが、トレンドマイクロのセキュリティソフトウェアの販売は、PC販売の影響を受けやすいが好調だ。同社の大三川彰彦取締役副社長は「売上高は13年度(13年12月期)や14年度よりも伸びている」と、逆風の中でも堅実さを見せる。

●サポートパックが平均単価のアップに貢献

2014年12月期の日本国内の売上高は約500億円(前年比105%)。内訳は個人向けと企業向けで約250億円ずつ。なぜトレンドマイクロは好調を維持しているのか。

出荷本数自体は減っている。一方で、平均単価を上げる戦略に成功し、家電量販店にとっては、収益貢献度が高い製品として定着したためだ。けん引している製品は、同社内で「ホワイトパッケージ」と呼ぶサポート付きの白い箱で提供するウイルスバスターだ。

このパッケージは、365日・午前9時から夜中24時まで、セキュリティソフトに限らず、PCやスマートフォン、インターネットの接続トラブルに対応するサポート「デジタルライフサポート」がセットになっている。「ウイルスバスターは国内で1000万人以上の方に使われいている。ホワイトパッケージは200万人以上の方が購入している」(大三川副社長)と話す。

9月5日からは、ユーザーのPCとサポート担当者が遠隔操作でトラブル対応できる「ウイルスバスター クラウド10+デジタルライフサポート プレミアム」を発売した。価格はオープンだが同社のオンラインショップの税込価格は1年版が7980円、2年版が1万3800円、3年版が1万8590円(10月2日17時までのキャンペーン価格は1万5790円)。

家電量販店の店頭からも、販売本数は少なくなっても、売り上げ貢献度が大きいと評価が高い。セキュリティソフト単体の性能だけでなく、周辺機器に関連するサポート強化が全体を底上げしている。

●7年間のノウハウの蓄積が差異化に

サポートパック付き商品は7年前から投入している。サポートシステムの構築をパートナー企業任せにするのではなく、自前で対応してきた。そのノウハウの蓄積が大きいという。

例えば、同社に寄せられる問い合わせ内容は「見覚えのないポップアップが表示される」「Windows 8の操作方法が分からない」「Excelの操作が分からない」「インターネットの画面がいつもと違う、どうして?」「迷惑メールの整理の仕方が分からない」など。どこに問い合わせればいいのか分からないものばかり。

最近では「Windows 10の通知がでているけど、何?」というものまであり、トレンドマイクロが扱うセキュリティソフトとは関係ない内容も多い。こうした質問にすべて対応するのが「デジタルライフサポート」というわけだ。

PCやスマートフォン、プリンターなどのトラブルは、顧客が店頭に問い合わせてもメーカーのコールセンターに聞いてほしいといわれる。メーカーのコールセンターはつながりにくい。つながってもハードではなく、ソフトウェアの内容は対応できないことも少なくない。

ユーザーの不満解消ツールとして、サポートパック付きのウイルスバスターの販売を伸ばすトレンドマイクロ。「デバイスを守ってきた会社から、将来的にはお客様にデジタルライフを安心で、安全に楽しんでいただくためのソリューションサービスやコンシェルジュサポートを手掛けていきたい」と、大三川副社長は力説する。サポート事業が、トレンドマイクロの新たな成長シナリオの柱になりつつある。(BCNランキング 細田立圭志)