『スーパー・チューズデー…』の原作・脚本を手がけたボー・ウィリモン氏

ジョージ・クルーニーが出演だけでなく、監督、共同脚本、製作を務めた『スーパー・チューズデー ~正義を売った日~』が31日(土)から日本公開されるのを前に、本作の原作と共同脚本を手がけたボー・ウィリモン氏が来日し、インタビューに応じた。

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『スーパー・チューズデー…』では、アメリカ大統領選挙の予備選が行われる“スーパー・チューズデー”に向けて、有力候補(クルーニー)、正義感あふれる広報官(ゴズリング)、秘密を抱えるインターンの選挙スタッフ、ライバル候補の参謀ら様々な人物の思惑が交錯し、正義の実現と挫折、裏切りのドラマが描かれる。

本作はウィリモン氏が2008年に執筆した戯曲『ファラガット・ノース』が原作。民主党予備選に出馬したハワード・ディーン候補の選挙スタッフを務めていたウィリモン氏がそこで見た光景や体験を基に描いた作品だ。しかし、クルーニー監督は本作を「政治映画とは思ってない」と公言。ウィリモン氏もその考えに首肯する。「この映画は背景がたまたま“政治の世界”というだけで、本質的には人間がもつ裏切りや野心、欲望、忠誠心を描いています。だから映画のために脚色する際もその軸からはブレないように注意しました」。

物語の中心にいるのはゴズリング演じる広報官スティーヴン。彼はスピーチ原稿を書き、マスコミ対応をし、候補者のイメージ戦略まで行う敏腕スタッフで、その行動力と次々に飛び出す力強い言葉は“候補者ではなく、実は広報官が出馬しているのでは?”とさえ思うほどだ。「候補者というのは実は“ひとりの人間”ではありません。例えるならオバマというのは、何百人もの人間が関わって作り上げた“アイデア”のようなものなんです。そこには顧問がいて、参謀がいて、スタッフがいて、候補者を演出します」。本作に登場する人物たちは、表面的には“良いこと”ばかりを口にするが、実際には様々な思惑を抱えている。「政治の世界は演劇の世界に似ています。いかにして裏側を隠して“良いイメージ”を作り上げるかに腐心するわけです。でもFacebookやTwitterを見ていると、みんなが政治家になったようにも見えますね。みんなが“自分のイメージ”を作り上げる気分を知っているのかもしれません」。

ちなみにウィリモン氏は本作が初の映画脚本だが、いきなり自分の書いたセリフをクルーニーやゴズリング、フィリップ・シーモア・ホフマンら名優たちが口にすることになった。「確かに脚本家とスピーチライターは似ている部分がありますね。ただ、映画の脚本はスピーチと違って、思っていることを全部書くわけではありません。あえて言わないことで会話の“行間”を読ませたり、想像力をふくらませたりします。時には本心と逆のことを言う場合もあります」。選挙の裏側を知り尽くした男が描く、普遍的な人間ドラマ。画面に映る会話の裏側に、どんな本心や狙いが渦巻いているのか想像しながら観たい作品だ。

『スーパー・チューズデー ~正義を売った日~』
3月31日(土) 丸の内ピカデリーほか全国ロードショー