この9月、スマートフォン(スマホ)の販売台数前年比が83.9%と2ケタ割れを喫した。9月25日にはアップルのiPhone 6s/6s Plusが発売されたばかり。にもかかわらず販売台数が大きく前年を下回るのは異例の出来事だ。一方シャープは10月6日、2足歩行可能な小型ロボットとスマホを合体させた「RoBoHoN(ロボホン)」を発表、新たな市場の開拓を狙っている。スマホ市場の潮目は大きく変わりつつある。

日本のスマホ市場はアップルのシェアが極めて高い。9月は新製品発売直後とあって、63.1%と圧倒的なシェアを記録した。しかし、71.7%だった昨年9月に比べれば、アップルの影響力が小さくなっていることは否めない。アップルの販売台数前年比も74.3%と2割以上も縮小している。9月のスマホ市場全体が大きく前年を下回ったのはこうした背景があった。

アップル不調の要因はいくつかある。昨年はiPhone 6/6 Plus発売日が9月19日と今年より6日早く、発売直後にシルバーウィーク最後の祝日、9月23日を迎えたこと。今年は予約販売のみだったため、恒例になっていた発売を待つ長蛇の列がなく、メディアの露出も少なかったこと。さらに今年は、中国でも同日に発売したたため、中国向け転売目的の購入が激減したと見られること、などだ。

ニュース性の乏しさもある。2013年にiPhone 5s/5cの発売時には満を持してNTTドコモが取り扱いを開始。昨年のiPhone 6/6 Plusでは、初めて画面サイズを4.7インチと5.5インチの2種類としてリリースしたのも話題を呼んだ。今年のiPhone 6s/6s Plusでは、さらなるパフォーマンス向上や「3D Touch」など新しい機能があるものの、前モデルとの明らかな差という点ではわかりにくい。このところ拡大している、比較的安価なSIM フリースマホの勢いも影響しているだろう。

シャープは、9月のスマホシェア9.1%と2位。アップルに大きく水をあけられているばかりでなく、14年11月以降11か月連続で販売台数の前年割れが続いている。この5月には49.0%と半減したものの、9月は99.8%と前年並みまで押し戻してきた。10月6日に発表したロボット型のスマホRoBoHoNは「飛び道具」(コンシューマーエレクトロニクスカンパニーの長谷川祥典 社長)の側面もある一方で、スマホ市場の閉塞感を何とかして打ち破ろうとする同社の姿勢の現れとも言える。

何かと耳目を集めているソフトバンクのパーソナルロボットPepperだが、頭脳がクラウド側にある点ではRoBoHoNも同じだ。コミュニケーションを重視するなら、必ずしも大きなボディである必要はない。記者会見に共同開発者としてRoBoHoNを胸ポケットに入れて登場した、ロボットクリエイターで、ロボ・ガレージの高橋智隆 代表取締役は「ロボットを一人一台ポケットに入れて暮らす時代が近づいた」と語った。閉塞感や天井感が強まるスマホ市場に大きな変化をもたらすのは、ロボット技術との組み合わせなのかもしれない。(BCN 道越一郎)

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