『ドライヴ』を手がけたニコラス・ウィンディング・レフン監督

ライアン・ゴズリングが昼と夜で別の顔を持つ天才ドライバーを演じたクライム・サスペンス『ドライヴ』が31日(土)から日本公開されるが、先日、PRのために来日したニコラス・ウィンディング・レフン監督がインタビューに応じた。

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本作は、昼はカースタントマン、夜は強盗を逃すプロの“逃し屋”を営むドライバーの男(ゴズリング)が、同じアパートに住む子連れの女性アイリーン(キャリー・マリガン)と偶然に出会い、恋をしてしまったことから、裏社会との凄惨な争いに巻き込まれていく姿をスタイリッシュな映像で描いた作品だ。

レフン監督は、デンマーク出身でアメリカで映画を学び、自国と米国の両方で新作を発表する気鋭の映画作家。本作でカンヌ映画祭監督賞を受賞し、ゴズリングと再タッグを組む新作も進行中だ。「ライアンは多くの優れた資質をもっているが、特筆すべきはセリフを用いることなく幾多の感情を表現できること。稀有な才能だろうね」。

だからレフン監督は本作で、ゴズリング演じる主人公に必要最低限のセリフしか与えなかった。「撮影中はライアンにもキャリーにも『ムダに動かないでくれ』とリクエストした。喋れない、動けない状況を作り出すことで、俳優のテクニックをそぎ落として、彼らの中にある純粋なものを引き出したかったんだ。僕は観客が絶対に飽きないものは“純粋さ”だと思っている。僕のポリシーは“less is more”。ときには“nothing is everything”とさえ思ってるよ」。

レフン監督のポリシーはセリフだけでなく映画全体におよんでいる。映画『ドライヴ』ではムダな説明セリフや描写は切り捨てられ、表現の“省略”を効果的に用いることで観客を物語にひきつける。「芸術にはサブリミナル的な要素が重要だと思う。観客のために少しのミステリーが残らないとね。だから“表現の省略”が重要な意味を持つんだ。映画は何が“見えるか”ではなく、何が“見えないか”が大事なんだ」。孤独に生きてきたドライバーの男は一体、何を想うのか? そして物語はどこへ向かうのか? レフン監督の巧みな演出に乗せられて観客はラストシーンまで一気に走りきることになるだろう。

ちなみに本作には何か所か、目をおおいたくなるようなショッキングな場面が登場するが、どうやらそれは監督のお気に入りの1本が関係しているようだ。「好きな映画はたくさんあるが、14歳の時に観たトビー・フーパーの『悪魔のいけにえ』ほど印象に残っているものはない。あの時に初めて映画は“アート”なんだとわかったんだ。だから僕の撮る映画は必ずどこかに『悪魔のいけにえ』の要素や影響が入っていると思うよ」。

『ドライヴ』
3月31日(土)より、新宿バルト9他全国ロードショー