ペラペラしゃべる子、無口な子。絵本の感想を聞いたら反応のある子、無反応の子。子どものタイプは本当に様々。しかし、無口、無反応な子だと親としてはやや不安になりませんか?

1人でできる子になる「テキトー母さん流」子育てのコツの著者の立石美津子がいくつかの例でお話しします。

お喋りすること、自分の考えを言葉で発表すること、作文を書くことなどはすべてアウトプット、再生です。

そして、周りの大人は子ども側からアウトプットされれば、子どもの頭の中にあることを把握できるので安心できますよね。

けれども、この世に生まれてまだ数年の幼児にアウトプットを求めるのはハードルが高すぎるかもしれません。実は人生のスタート時点の乳児、幼児期はインプット、ひらすら録音する時代なのです。

録音されていなければ、言葉は出てこない

例えば、子どもに「春に咲く花はなんでしょう?」と質問したとします。

「桜は春に咲く」

「チューリップは春に咲く」

と答えが出てくるのは、これらの情報がどこかで入っているからです。

「よく考えて」と何度、質問を繰り返しても、この情報が録音がされていなければ、頭を捻っても永遠に答えは出てこないのです。

小学生の漢字の書き取りも「山、川」の漢字が書けない子に、いくら「よく考えて、思い出して」といっても、どこかで練習していなければ書けないのと同じですね。

子どもの語彙を豊かにする3ステップ

子どもの語彙力を高めるためには、まずは親の方の意識を変えることが大切です。

ここでは子どもの語彙を豊かにする簡単3ステップを紹介します。

1: 「内言語」というものを理解しよう

しかし、出来ればアウトプット出来る子、自分の意見を相手にしっかりと伝えられる子に育てたいですよね。

実はその材料となるものは“言葉”なのです。

正式にはアウトプットされる言葉を「外言語(がいげんご)」と呼ぶのに対して、脳の中にある、内なる言葉 内言語(ないげんご)」と言います。人間が物事を考えるときは内言語を使って思考します。

2: まずは「内言語」を豊かにすることを意識

4歳くらいまでの子どもに「しっかり考えなさい」「自分の意見を言いましょう」などとアウトプットさせることに、必死にならなくても良いと筆者は考えています。

幼児期は再生よりも録音の時代。ひたすら思考の元となる、この内なる言葉、内言語を豊かにしていくことに注力しましょう。

“内なる言葉”ですから子どもの口から外言語として出てきません。つまり大人が把握することが難しいのです。

ですから、「うちの子、言葉が遅い。お喋りじゃない」と外言語にとらわれて心配することはありません。頭の中にさえ入っていればいいのです。

散歩中に「もう、春が近いから桜のつぼみがたくさんついているね」と語りかけているだけで十分なのです。

昔、映画“ミラクル・ワールド ブッシュマン”で主演を演じたナミビアで一番有名な俳優のニカウさんがアフリカからやってきたときのこと。海を初めて見て「大きな湖だ」と叫んだという逸話を講演会で聞いたことがあります。

実はニカウさんが住んでいた土地には湖しかなかったので、彼が海を見た時、自分の頭の中の内言の“湖”という言葉を通して感じていたので、「大きな湖」と言ったという話でした。

これも内言語で思考する例かもしれませんね。

3: 内言語を豊かにする方法を実践しよう

前記のニカウさんの例と同じで、真冬のある日、家の外に出た途端、単に「寒い」と感じる子と、「凍えそうだ」「身体の芯から冷える」と感じられる子がいます。これは内言語の種類による差です。

「ちゃんとしなさい」「早くしなさい」、更に「超」「っていうか~」のような、貧弱なシンプルセンテンスだけしか飛び交っていない家庭で過ごしていると、残念ながら内言語はなかなか増えません。

©あべゆみこ

では、内言語を増やすにはどうしたらよいのでしょうか。

その方法のヒントは絵本にあります。

例えば、『マッチ売りの少女』には「少女はかじかんだ手をさすりながら、マッチを一本シュとすり、凍えそうな身体を温めました」と書いてあります。

これを聞いて子どもは「凍える」「かじかんだ」など、親から聞く日常会話では決して得ることができない言葉を獲得していくことができます。