東京セレソンデラックス2012年番外公演『ピリオド』稽古場より(撮影:源 賀津己) 東京セレソンデラックス2012年番外公演『ピリオド』稽古場より(撮影:源 賀津己)

俳優・脚本家の宅間孝行が主宰し、今年末での解散を発表している東京セレソンデラックス。番外公演として4月3日(火)より東京・中野ザ・ポケットにて『ピリオド』を再演する。東京セレソンデラックスの舞台は毎回、多くのキャストがオーディションで選ばれており、今回も初参加のキャストが半数ほどを占める。本番直前の3月下旬、都内の稽古場を訪ねた。

東京セレソンデラックス2012年番外公演『ピリオド』チケット情報

これまで切ない作品を数多く上演してきた東京セレソンデラックスにとって、笑えるが切なくもある『ピリオド』はまさに王道作品。今秋に予定している解散前の最後の本公演はコメディ作品であるため、このタイプの物語を見られるのは今回が最後。「小さな劇場で上演することを逆手にとって作った物語」と宅間が語るように、笑いがありながらもサスペンス調に進む芝居の中には、大きな舞台では聞こえない小さな声や、表情が見えないとわからない細かい演技も多い。

稽古場に入ると、序盤の各シーンに宅間が細かく演出をつけているところだった。一昨日に初の通し稽古を終え、完成度としてはまだ半分程度。宅間からはセリフや演技について「自分がそういうとき、具体的にどうするの?」「気持ちがないよ!」など、真剣な雰囲気でひとつひとつ演出がつけられていく。感情を高ぶらせる場面を何度もやり直ししている役者には「自己批判はしないでね」と一言ブレイクする場面も。言葉でうまく伝わらないときには、実際に宅間自身が演じてみせる。その瞬間にメンバー全員の腑に落ちて、演出イメージを共有できていたのはさすが俳優・宅間孝行。

宅間が今回の作品でこだわっているのは、そのときの役の気持ちだ。「最近、いろいろな演出をしてきて、あまりに多くの役者が、自分のセリフをどう言うか? ばかりに頭がいってしまっていることに気がついたんです。でも実はお客さんが見ているのは、どういうキャラクターの人がどういう感情でここにいるのか? という感情の機微の部分。稽古でもセリフを捨てろと言っています」。今回のオーディションでもその点を重視し、「役の気持ちを感じとってアプローチできそうな人を選びました。芝居はもちろん上手いに越したことはないんですけど、高校野球が人気あるみたいに、テクニックを凌駕する心を動かすものが芝居にもあります。役者が本当にワクワクしてるんだろうなっていうのが透けてみえると、演技がたとえ下手でも一緒にワクワクしてしまいますよね」。

残りわずかな稽古期間ではあるが「そのときの気持ちは何?」と、役者ひとりひとりに問いかけ自分で考えさせる宅間。それぞれの役者がどのように解釈するかで、初演とはまったく違う『ピリオド』を見ることができそうだ。

東京公演は4月15日(日)まで。その後、4月20日(金)に三重・四日市市文化会館 第1ホールにて上演。 チケット発売中。

取材・文:大林計隆