どん底から這い上がることができた理由

このままでは二度と裏の世界から抜け出ることはできないと感じた円山は、風俗業界から足を洗い、その後14職種もの仕事を渡り歩く。

人を人とも思わない数字だけを追い掛けさせる営業やコンサル会社など、渡り歩いた企業はまさにブラックな企業ばかり。

しかし風俗を含め、ほかのブラック仕事でも彼は必ず身を粉にして働き、上を目指した。それは彼の育った家庭環境の影響が少なからずともあるかもしれない。「どんな劣悪な環境でも、とにかく生き延びる」ということ。

そしてもうひとつ、誰にも頼らず三流高校から早稲田大学に入学したという自信だろう。「努力は絶対に報いてくれる」ということが身に染みていたのかもしれない。

初めは夜の街の片隅にある風俗店のスカウトからスタート。その後も吹けば飛んでいきそうな立ち上がったばかりの会社などばかりだった。

確かに朝から晩まで働き通しで、激しいノルマ達成のヤジが飛び交うまさにブラック企業だ。しかしそこで円山は会社や置かれた環境につばを吐き背中を向けるのではなく、果敢に立ち向かい一番を取るという野心をむき出しに戦った。

例えば年収1000万を軽く超えて、福利厚生もしっかりしている大企業には、優秀な大学を卒業しそのまま就職を決められた一部の選ばれた人だけがいくものだと思っていた。

しかし円山は違う。劣悪な家庭環境に育ち、必死の思いで早稲田に入るも、一度は風俗街に身を沈めた男だ。しかしおかれた場所でまさに“死ぬ気の思い”で働き結果を残したからこそ、縁あって今は「超名門グローバル企業」で恵まれた生活を送るようになった。

彼の泥臭く、時にみじめな人生は決してサクセスストーリーとは言えないかもしれない。でも家庭環境も学歴も、最初に就職した会社も恵まれていないと感じている人々に、きっと多くの勇気と、人生を生き延びていく方法を教えてくれるはずだ。

『早稲田出ててもバカはバカ』
円山 嚆矢 著/発売中