“小泉今日子”と“変身”

 “小泉今日子”と“変身”
実はこれ、切っても切れない関係にあるようです。

というのも、書籍『小泉今日子はなぜいつも旬なのか』の著者・助川幸逸朗さんは、キョンキョンには類いまれな「変化する力」があると分析しています。

今回は、キョンキョンのこれまでの変身歴を見ながら、その魅力に迫りたいと思います。

キョンキョンがデビューした当時は、松田聖子さんや中森明菜さん、早見優さん、松本伊代さんなど、ライバルがたくさんいました。一般的には「花の82年組」と呼ばれており、大勢のアイドルが登場した時期でもあります。

そんなアイドルらが、当時流行った聖子ちゃんカットにならい「かわいい」を獲得していく中、キョンキョンは一人、短髪に変え、「かわいい」ではなく「かっこいい」を求めていくのです。

男性から人気のわかりやすいアイドルではなく、「女性から人気のあるアイドル」を目指したキョンキョン。すでにその頃から硬派でマイノリティーなイメージがありました。

当時はバブル期。大金を投入した悪ノリ気味のプロジェクトが多々あったようですが、そこでハマッたのがキョンキョン。

「その種の企画に、いちばん重宝に使われたアイドルが小泉今日子です。男性よりも女性に人気があり、奇抜なことを仕掛けるときに起用するとはまる――今のタレントでいえば、きゃりーぱみゅぱみゅみたいなイメージでした」と助川さんは例えます。

その後も次々と路線を変えていくキョンキョン。
渋谷系ミュージシャンが手がけた楽曲を歌うオシャレ路線もマッチ。永瀬正敏さんと結婚すると、女優として様々な演技賞を受賞するように。また、離婚後も女性の心情を代弁する女優として活躍しました。

読売新聞の読書委員を担当することもあり、何をしているのがキョンキョンなのかがわからなくなる程に。

ただ、一つ言えることは、変化していく先ですべて自分の居場所を見つけ、高い評価を得ていることです。

もはや、アイドルだった頃は遠い昔のように感じても仕方が無いでしょう。キョンキョンは変わり続け、その都度、新しいイメージを更新し続けたのです。

キョンキョンが今でも若い女性から好かれる理由の一つに、いわゆる「バブルお姉さん」たちとは違うからと助川さんは分析します。

バブル絶頂期に20代を過ごした女性はモテ自慢が好きな傾向があります。しかし、バブル女性のモテ自慢は、車なし・ワリカンデートが当たり前の今の若い世代にはいまいちピンときません。

キョンキョンの場合は、芸能界でのポジションはあまり気にしていないようで、巨額な給料をもらっていては、自分のポリシーに反する仕事を断れなくなるので減給を申し出ることもあったそう。

また、若くてお金のない役者さんには飲み代を払ってあげることも。バブル世代によくある「自分に特別な価値があることを、明確な尺度によって証明したい」という価値観が、ことキョンキョンに関しては無縁に感じます。現代の言葉で言い換えると、“マウンティングをしない女性”なのです。

ダーウィンの有名な言葉に、「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」というものがあります。

きっと芸能の世界で生き抜くことは私たち一般人が考えるよりも、想像以上に難しいことでしょう。しかし、今でもドラマ『あまちゃん』や『最後から二番目の恋』でステキな姿を見せるキョンキョン。そこには変化の連続があったからではないでしょうか。

まだ変身願望のあるキョンキョン。今度はどのような姿を私たちに見せてくれるのでしょう。まずは、今夜、元セーラームーンに扮したその姿を楽しみにしたいと思います。